フリーランスは、仕事を受ける際にクライアントと「業務委託契約」を結んでいます。
一方、企業に雇用されている会社員や契約社員は、企業と「雇用契約」を締結しています。
今回は業務委託契約・雇用契約の違いや契約に関するトラブルなど、「フリーランスの契約」について詳しく解説します!
業務委託契約とは
業務委託とは、自社の「業務」の一部を外部に「委託」することです。
この契約を結んだフリーランスは、クライアントから委託された業務を遂行したり完成させたりすることで、対価=報酬を得ます。
以下は業務委託の一例です。
業務委託の一例:リンゴ農家のAさん
リンゴ農家Aのさんは今よりたくさんのリンゴを売るために、「ホームページに商品のPR記事を掲載する」ことを思い付きました。
しかしAさんはリンゴを育てるプロであって、PR記事を書くプロではありません。
そのため自分が育てたリンゴを上手にPRすることも、記事にすることもできないのです。
そこで記事の作成を、フリーランスライターのBさんへお願いすることにしました。
つまりAさんが抱えている「記事を作成する」という業務を、社外のBさんに委託するということです。
実は「業務委託契約」について明記している法律はありません。
ほとんどの業務委託契約は、法律上の「請負契約」または「委任契約」にあたります。
「請負契約」は民法第632条に、「委任契約」は民法第643条に記述されています。
請負/委任/準委任とは
業務委託契約は業務形態によって以下に細分化されます。
- 請負契約
- 委任契約
- 準委任契約
すべて「業務を外部へ委託するときに結ぶ契約」ではあるのですが、「請負」と「委任/準委任」では、求められているものが異なります。
請負契約
請負契約におけるゴールは「業務の完成」、つまり完成した成果物を納品することが求められています。
- 途中までやったけれど完成しなかった
- とりあえず完成はしたけれど求められているクオリティに満たなかった
このような場合には、報酬が発生しません。
委任契約/準委任契約
一方で委任契約/準委任契約におけるゴールはどちらも「業務の完遂」です。
つまり成果物を納めなくとも、依頼された業務が遂行されていれば問題ありません。
その業務によって委託先が期待する結果が出なかったとしても、報酬はきちんと支払われます。
委任契約と準委任契約の違いは、依頼される業務の内容です。
- 委任契約:法務・税務など法律に関連する業務(弁護士への依頼など)
- 準委任契約:法律に関連しない業務(コンサルティング、ソフトウェアの開発など)
雇用契約との違い
会社員が結ぶ雇用契約と、フリーランスが結ぶ業務委託契約の決定的な違いは、「使用従属関係の有無」です。
使用従属関係とは、「使用者の指揮命令を受けて労働を提供し、その労働の対価として賃金が支払われる関係」のこと。
会社員とフリーランスに当てはめて考えてみましょう。
- 会社員
使用従属関係あり:雇用契約 - フリーランス
使用従属関係なし:業務委託契約
フリーランスとクライアントの間に使用従属関係がなければ「業務委託契約」となります。
使用従属関係の有無は、複数の要素から判断されます。以下はその一例です。
- 指揮監督
業務遂行時の自由度が高く、細かな指揮命令を受けなければ、使用従属関係にはない - 勤務時間や勤務場所の拘束性
拘束されていなければ、使用従属関係にはない - 業務依頼への諾否の自由
仕事を受けるか否か自由に決められれば、使用従属関係にはない など
契約に関連したトラブル
契約に関する正しい知識がないと、気付かないうちにトラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。
契約に関して起こりうるトラブル例をご紹介します。
契約外の業務を依頼される
フリーランスは依頼された業務だけを完成させれば(遂行すれば)問題ありません。
たとえば会社員の場合、依頼された業務のほかに「ついでに○○も進めておいてよ」などと追加指示を受けることは少なくありません。
もちろんこの業務指示に問題はありませんし、依頼された側も対応するでしょう。
しかしフリーランスの場合、契約外の業務については対応する必要がありません。
これを知らないと、クライアントから「ついでに○○もやってよ」と頼まれたことを引き受けてしまい、最悪の場合その成果を無償で提供することにもなりかねないのです。
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委託先から指揮命令を受ける
先ほど説明した通り、フリーランスは成果物の納品または業務の完遂を求められています。
つまり指示通りの納品物が完成していれば、または指示通りに業務が遂行されていれば、そこに至るまでの過程は重要視されないということです。
しかし業務を進める中で、知らず知らずのうちに委託先からの業務指示を受けてしまうことがあります。
とくに常駐型案件の場合はクライアントが近くにいることも多く、業務指示を受けやすい環境といえます。
しかしここで指示を受けると「偽装請負」といって、法律違反とみなされてしまうのです。
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トラブルを避けるために重要なこと
フリーランスはSNSや知人の紹介などで仕事を受注することも少なくありません。
この場合、正式な書面を交わさず口頭やメールのみで契約を済ませてしまうケースも多いでしょう。
しかしこれが、トラブルの原因になってしまいます。
こうした契約トラブルを避けるためには契約形態を正しく理解し、自身が結んでいる業務委託契約が「請負契約」にあたるのか、「委任/準委任契約」にあたるのか、明確にしておくことが重要です。
ここで必要なのが、契約内容を明記した書面。
法的に書面の交付が不要であったとしても、自分の身を守るために「契約書」や「発注書」などはきちんと交わしておくようにしましょう。