フリーランスは会社員と比べて保育園の入園審査で不利だ、という話を聞いたことはありませんか?
これまでフリーランスは、会社員と比べて収入が安定しないこと、また勤務状況が見えにくいことなどを理由に、入園の審査でやや不利になりやすいと言われていました。
しかし近年、状況は変わりつつあります。
フリーランスでも準備をしっかり整えておけば、入園時の審査で不利になることはありません。
今回は保育園の入園申込にともなってフリーランスがやるべきこと、やっておくと安心なことを、子育てフリーランスの筆者が解説します!
近年の保育園審査状況
会社員と比べ、フリーランスの入園審査が不利だとされてきた理由のひとつが「働く場所」です。
- フリーランス:居宅内労働
- 会社員:居宅外労働
昨今はこれに当てはまらない人もたくさんいますが、従来はこの考え方が根底にありました。
つまり、働く場所以外の条件が全て同じでも、「自宅で」仕事をしているフリーランスより、「外へ出て」仕事をしている会社員の方が優遇されていたということです。
しかし働き方改革の推進によって様々な働き方が受け入れられるようになったことを受けて、厚生労働省は各自治体へ審査基準の見直しを呼びかけました。
※多様な働き方に応じた保育所等の利用調整等に係る取扱いについて|内閣府子ども・子育て本部(平成29年12月28日)
これにより、働き方が審査に影響することは減りつつあるようです。
保育園の入園申込に必要な書類
保育園の入園を希望する場合、必要書類を添えて各自治体に書面で申請するのが通例です。
フリーランスが保育園の入園申込をする際は、きちんと働いていること、そして今後も働き続けるためには保育園の利用が必要であることを書類でしっかりアピールしなければなりません。
今回は多くの自治体で必要とされる書類を4つご紹介しますが、これはあくまで一例です。
必要な書類・書式は自治体ごとに異なりますので、申込時には自治体のWebサイトなどを十分確認してくださいね。
就労証明書
その名のとおり、働いていることを証明する書類です。
会社員の場合は勤務先に申請すれば発行してもらえますが、フリーランスは自分で作成しなければなりません。
自治体がフォーマットを指定している場合もあるので、確認してから作成しましょう。
就労の状況を申告する書類
仕事の内容や状況を詳しく申告するための書類です。
就労証明書と同じフォーマットになっていたり、そもそも提出義務がなかったりと、自治体によって名称や対応が異なります。
フリーランスの仕事状況を伝える手段としては非常に有効であるため、たとえ提出義務がなかったとしても作成しておくのがおすすめです。
記載すべき項目が指定されている場合もありますが、自分で作成する場合は以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。
- 日々の業務の記録(就労日数・就労時間・業務内容など)
- 仕事の実績
- クライアントとのやり取りの記録 など
働いている時間数や日数が審査に影響することも多いため、これらの情報は漏れなく伝わるようにしましょう。
開業届のコピー
会社員とは異なり、働いていることの証明が難しいフリーランス。就労証明書の提出だけでは足りないこともあります。
そこで役に立つのが「開業届のコピー」です。これを用意することで、「個人事業主として働いている」ことがしっかりとアピールできます。
※開業届を出していない場合は、働いていることを証明する手段として業務委託契約書のコピーが有効な場合もあるようです。
収入を証明する書類
自治体によっては、収入を証明する書類の提出を求められるケースもあるようです。
その際は、確定申告書のコピーを用意しましょう。
そもそも提出が不要な場合もありますし、納品書や発注書・支払調書などで代用できる場合もあるため、詳細は自治体に確認が必要です。
審査通過のためにできること
待機児童が多かったり、保育園の数が少なかったりする地域では、書類をきちんと用意しても保育園へ入園できるとは限りません。
ここからは、書類の準備とは別にできることをご紹介します。
※今回ご紹介する内容は、あくまでも審査通過の助けになるかもしれないことです。保育園への入園を保証するものではありません。
開業届を出しておく
「開業届」はフリーランスの就労をアピールするツールのひとつです。
会社員は勤務先の人事・労務部門が「この社員はきちんと働いていますよ」と自治体に証明してくれます。しかし企業に雇用されないフリーランスには、就労を証明してくれる人がいません。
こうしたフリーランスにとっては、開業届が会社員の就労証明と同じような意味を持ちます。
開業届を提出する場合、継続年数や年間所得といった条件はありません。
もし開業していないのであれば、保育園の入園申込をする前に届出をしておくと良いでしょう。
青色申告をするには①開業届と②青色申告承認申請書の提出が必須です。
今後青色申告を希望する場合は併せて提出しておきましょう!
入園させやすい自治体へ引越しをする
非常に大掛かりではありますが、入園させやすい自治体・待機児童が少ない自治体に引越しをするというのもひとつの方法です。
自治体によって、待機児童の数は大きく異なります。
たとえば筆者が住んでいる地域には、待機児童がほとんどいませんが、筆者の友人が住む地域は待機児童が非常に多く、保育園になかなか預けられないと話していました。
筆者とその友人が住んでいる地域は車で40分ほどの距離。そこまで離れていないにもかかわらず、これほどの差があります。
待機しても入園できるわけではありません。その間無認可園に預け続けることを考えると、認可園の空きがある地域に引越すほうが経済的なケースもあるでしょう。
ただし引越しをするためには家族の協力が必要不可欠です。通勤・通学に影響が出る家庭には、この方法は向いていません。
保育実績を作る
自治体によっては、過去の保育実績が加点対象になることがあります。
- 認可外保育園に子どもを預けて働いている
- ベビーシッターを利用して働いている
こうした実績があれば、保育が必要な状況であることが伝えられ、希望する保育園の入園審査時に少し有利になるでしょう。
※ただし基準は自治体によって異なります。保育実績が加点になるか、自分が住んでいる地域の審査基準を確認しておきましょう。
0歳児入園を目指す
入園希望者が殺到するクラスを避けることで、審査に通りやすくなるかもしれません。
会社員の女性が子どもを保育園に預けるのは、育休が明ける1歳頃であることが多いようです。
さらに0歳児クラスからの持ち上がり園児が多いと新規入園の枠が限られるため、1歳児クラスの審査は倍率が高くなります。
これを避けるために、0歳児クラスから保育園に入園させるという方法もあります。
編集部より:『入園させたもの勝ち』の状況も……
以下はとある市町村の加点例で、2つを満たした場合の加点は3点です。
- 子どもを市が指定する施設以外に有償で預けている
- 複数児童が同一の審査ランクで並ぶ
指定施設以外というのは認可外保育園やベビーシッターの利用などが含まれます。
一方、指定施設(認定園など)に預けている場合の加点は1点。3点加点はとても大きく見えますが……既にきょうだいが入園している施設に申し込む場合、4点加点です。
つまり、競争率が低い0歳児クラスに第一子を預けておくと、第二子の入園がスムーズになる可能性があります。
これを「入園させたもの勝ち」と表現する保護者も多くいるようです。
フリーランスだからこそできる
もうひとつの選択
働く場所も、働く時間も、仕事の量も自分で調整できるフリーランス。
働き方の自由度が高いからこそ、保育園を利用せず自宅で子育てと仕事を両立するという選択肢を取ることもできます。
ちなみに筆者は現在子育て中です。保育園は利用せず、自宅で育児しながら仕事をしています。
これが実現できているのは仕事量やクライアントの理解、子どもの状況など、自宅保育できる条件が偶然揃っていたからです。
しかし今よりも仕事量を増やしたり、より負荷の高い仕事を請け負ったりすることがあれば、自宅保育は難しくなるでしょう。
フリーランスは在宅でも働けるからこそ「子育てしながら仕事も頑張りたい!」という人もいるかもしれませんが、何より大切なのは「無理をしないこと」だと筆者は考えています。
仕事量を自分で調整できるのは、フリーランスならではのメリットです。筆者のように自宅保育をする場合はこのメリットを活用し、仕事量をある程度セーブする必要があります。
一方で受注案件が多い人や「フルタイムで働きたい!」と思っている人は、保育園を利用しなければ育児と仕事の両立は難しいでしょう。
仕事と子育ての両立を目指すのはとても素晴らしいことですが、欲張りすぎて無理をしても長続きしません。
自分が何を優先したいのか、そのためにはどう行動すべきかじっくり考えて、自分にとってベストな選択をしてくださいね。