組織という後ろ盾がないフリーランスは「自分の身は自分で守る」が基本! 仕事に潜むあらゆるリスクへの備えは万全ですか?
REMO-zineではこれまでに「フリーランスのリスクへの備え方」をいくつか提案してきました。
今回はクライアントの倒産によるリスクに備える「経営セーフティ共済」をご紹介します。
実はこの制度、フリーランスにとってもおすすめ! 今回は制度の仕組みに加え、フリーランスにとって魅力的なポイントもご紹介します。
フリーランスも加入できる!経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済(正式名称は「中小企業倒産防止共済」)は「取引先の倒産などによる売上減少」を救済する制度です。
経営セーフティ共済をざっくり説明
私たちフリーランスは納品や役務提供と引き換えに「その場で」報酬を受け取るわけではありません。1ヵ月分の報酬を翌月〜翌々月に受け取るケースが大半です。
もしその間にクライアントが倒産したら、報酬が支払われないかもしれません!
こうした「万が一」の時に無利子、かつ担保・保証人不要で資金の借入ができる制度です。
加入対象は法人だけでなくフリーランスや自営業者などの個人事業主も含まれます。さらに、こうした制度がなかなか利用しにくい副業フリーランスが加入できるのも特徴です。
また、万が一に備えながら「税制面」のメリットが受けられるのも経営セーフティ共済の大きな魅力!
税金のこと、将来に向けた貯蓄のことなど、お金に関する悩みが尽きないフリーランスにとって非常にお得な制度なのです。
経営セーフティ共済がフリーランスにおすすめの理由
フリーランスの「万が一」に備える制度は他にもたくさんありますが、経営セーフティ共済の概要を見ていくうちに「他にはないメリット」が見えてきました。
- 掛金が自由に設定・増減できる
- 解約のハードルが低い
- 節税対策が「経費」でできる
- 取引先の倒産時以外でも借り入れできる
以下ではこの4つについて紹介します!
掛金が自由に設定・増減できる
経営セーフティ共済は掛金が自由に設定できるうえ、途中で増額・減額できるのも大きな魅力です。
月々の掛金は5,000円〜10万円(5,000円単位)で自由に設定できます。上限額の800万円に至るまで、ご自身のペースで積み立てが可能です。
毎月の収支が変動しやすいフリーランスでも売上状況に合わせて調整できるのは安心感がありますね!
解約のハードルが低い
他の共済制度と同じく、経営セーフティ共済は解約時に「解約手当金」が受け取れます。
注目すべきは以下2点です!
- 自己都合解約でも解約手当金が減額されない
- 12ヵ月以上掛金を支払えば解約手当金が受け取れる
共済制度によっては自己都合解約の返戻率を低めに設定していることがありますが、経営セーフティ共済は自己都合解約でも手当金が減額されません。
また経営セーフティ共済は「全額返戻」までの道のりがとても短いのが特徴です。
以下の表に、経営セーフティ共済と小規模企業共済(いずれも中小企業機構運営)の加入期間と、自己都合解約における手当金例をまとめました!
共済名/支払期間 | 12ヵ月未満 | 12ヵ月〜40ヵ月未満 (1年〜3年6ヵ月) | 40ヵ月〜240ヵ月未満 (3年6ヵ月〜20年) | 240ヵ月〜 (20年〜) |
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経営セーフティ共済 | 0円 | 80%以上 | 全額 | |
小規模企業共済 | 0円 | 一部(約80%) | 全額 |
たとえば40歳で小規模企業共済に加入する場合、元本割れを避けるには60歳まで掛金を支払い続ける必要があります。一方、経営セーフティ共済は44歳あたりで元本割れが避けられるわけです。
40ヵ月を超えさえすれば、それ以降は長期的に積立できなくても損をすることもありません。
女性はライフステージごとに働き方が変わる可能性があるので、解約ハードルの低さは大きなメリットではないでしょうか。
節税対策は「経費」でできる!
経営セーフティ共済は節税対策としても優秀!
毎月の掛金が「所得控除ではなく経費扱い」というのがポイントです。
経費にしても控除にしても最終的な税負担は同じでは? と思いがちですが、実は違います。
たとえば所得税と住民税では、同じ所得控除が適用されても実際の控除額が異なることはご存知でしょうか。
- 所得税:48万円
- 住民税:43万円
経営セーフティ共済の掛金は経費として収入から差し引けるので、税の種類を選ばずに節税できるのです。
また掛金が自由に増減できるのも節税に効果的!
所得税の税率は課税所得195万円がひとつのボーダーラインです。
- 課税所得195万円未満:5%
- 課税所得195万円以上:10%
売上が好調なときに掛金を増やして課税所得を195万円未満に抑えれば、所得税率を5%に抑えることができます。
経営セーフティ共済は、万が一の事態に備えながら節税対策もできる、とてもお得な制度なのです。
取引先の倒産時以外でも借り入れできる
経営セーフティ共済は取引先の倒産時だけでなく、事業のためのお金が必要な時にも利用できます。
借入可能額は『掛金総額』の95%程度です。掛金の支払月数によって限度額が変わります。
1万円/月を40ヵ月支払っていた場合の例
掛金総額=1万円×40ヵ月=40万円
借入限度額は『掛金総額×95%×95%』で計算(40ヵ月以上納入)
借入限度額=40万円×95%×95%=36万1,000円
ただし掛金の支払いが12ヵ月未満の場合には利用できません。また、借入は30万円以上に制限されています。
経営セーフティ共済に加入・借入できる人
ほとんどのフリーランスは経営セーフティ共済の加入要件を満たすのではないでしょうか。
しかし、誰でも自由に利用できるわけではありません。まずはご自身が経営セーフティ共済の加入要件を満たしているか、確認してみてください。
また主目的である「共済金の借入」ができるタイミング、借入可能な金額も知っておきましょう!
加入できる人・できない人
経営セーフティ共済の加入要件は以下のとおりです。
- 事業を1年以上継続していること
→開業届を提出してから1年以上経過している - 資本金または出資金の額、および従業員数の条件を満たすこと
→業種ごとに異なる
1つ目として、開業届を提出してから1年以上が経過している必要があります。
2つ目の条件は業種ごとに異なり、たとえば筆者のようなWEBライター(サービス業)の場合、資本金/出資金は5,000万円以下、従業員数は100人以下であることが条件です。
なお、以下に当てはまる場合は経営セーフティ共済に加入できません。
- 税金を滞納している
- 中小機構からの借入の返還が滞っている
- 事業の継続が確認できない、または経理内容が不明 など
借入できるタイミング
取引先が以下のような状況に陥った場合に共済金の借入ができます。
- 倒産処理の手続きが始まった(法的整理・私的整理問わず)
- 取引停止処分を受けた
- 災害が原因で不渡りが出た/支払不能になった など
ただし取引先の企業が夜逃げした場合、共済金は受け取れません。
またこれ以外にも、一般消費者と取引をする事業者や売掛債権が発生しない不動産業者・金融業者なども共済金の貸付対象にならない可能性があります。
ハンドメイド作家の例
ハンドメイド作家が作品を販売する相手は「一般消費者」です。
「作品が売れず資金繰りが苦しい」ことはあっても相手が倒産することはありません。
一般消費者と取引をする事業者が貸付対象にならないのは、これが理由です。
借入可能額
取引先の倒産によって生じた被害額、または積立総額の10倍、いずれか低い方の金額を借入できます。
掛金の上限が800万円ですから、借入上限額は8,000万円ですね!
加入前に注意点を確認!
経営セーフティ共済にはたくさんのメリットがある一方で、いくつか注意点もあります。
いずれもお金に関わる内容なので、加入前に正しく理解しておきましょう。
- 解約手当金は課税対象になる
- 共済金を借りると積立金が減る
- 利益が出るわけではない
解約手当金は課税対象になる
掛金は必要経費として処理できますが、解約手当金は事業所得、つまり課税対象とみなされます。
そのため解約のタイミングによってはその年の課税所得が大幅に増えてしまい、税金の支払いが増えるかもしれないのです。
売上が少し落ち込んでいる年に解約するなど、上手に対策を取りましょう。
共済金を借りると積立金が減る
経営セーフティ共済の共済金は無利子で借入できますが、借入額の10%が積立総額から控除されてしまいます。
50万円積み立てていた場合の例
- 借入可能額:積立総額の10倍
→50万円×10倍=500万円 - 控除額:借入額の10%
→500万円×0.1=50万円
積立総額50万円ー控除50万円=0円
このケースでは、一度の借入で積立額が0円になってしまうのです。
無利子という大きなメリットはあるものの、控除額が大きいのでメリットが丸潰れする可能性があります。借入額の見極めが重要ですね。
利益が出るわけではない
経営セーフティ共済は掛金を「運用」するのではなく「積立」する制度です。iDeCoや小規模企業共済のような運用益は出ません。
損するわけではないので大きなデメリットではありませんが、少しでも利益を出したい人には不向きといえそうです。
備えと節税でフリーランスを支える経営セーフティ共済
フリーランスにとって経営セーフティ共済は、万が一の事態に備えながら節税対策もできる、まさに一石二鳥の制度です。
利益が出ることはないものの元本割れのリスクもないので、安心して利用できます。
加入年数や掛金などの制限によって共済制度を諦めていたかたは、経営セーフティ共済の加入をぜひ検討してみてください!