リモートワークと子育ての両立はなぜ難しいのか│自宅保育の乗り切り方を考える

コロナ禍での保育園登園自粛・休園により、リモートワークと育児を並行している方がいます。いわゆる「自宅保育」です。

これまで仕事と育児の両立は保育園ありきで語られてきました。しかしリモートワーク普及とコロナ禍の重なりにより「子どもの世話をしながら仕事する」という新しい両立スタイルが増えているのです。

保育園に行かず親と過ごせることが分かると、子どものテンションは1.5倍以上にアップします(筆者体感)。この状況下で仕事と育児を100%こなせる人は多くありません。

両立しなければ!と追い詰められている方、力を抜いてください。子どもの年齢や職場の状況など、両立を難しくさせる要素が身の回りにたくさんあるのです。

では自宅保育とリモートワークを並行している方の悩みや、両立を難しくする要因にはどういったものがあるのでしょうか。

今回はリモートワークと子育ての両立について考えます。

自宅保育とリモートワークの状況

積み木
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ベビーシッター/家事代行サービス「KIDS LINE」のデータをお借りして、自宅保育とリモートワークの関係を調べてみました。

今回のデータは2020年4月7日に緊急事態宣言の適用となった地域(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県)における、4月13日〜15日の調査結果です。

宣言を受けて、登園自粛や休園措置をとった園はどれくらいあったのでしょうか。

出典:KIDS LINE https://kidsline.me/contents/news_detail/575

なんと、95%が休園・登園自粛となったのです!

筆者宅周辺は保育園児の散歩コースなのですが、この時期は一切お散歩が行われませんでした。休園はしていなかったものの、登園自粛を要請していたようです。

こうした中、子どもの預け先を失った方はどうしていたのでしょうか。

出典:KIDS LINE https://kidsline.me/contents/news_detail/575

重複回答を鑑みても、約5割の方がリモートワークと自宅保育を並行させていたことが分かります。

ちょっとした風邪なら両親に頼る方もいるでしょう。しかしパンデミックの兆しがある時期ですから、そうもいきません。

それでは、実際に自宅保育をしながらリモートワークを行った方はどんな感想を抱いたのでしょうか。

・在宅勤務でも出勤しているのと同等の仕事量なのに、子どもも見ていないといけないのは難しいと痛感しました。

・毎日一日三食、子どもの栄養も考えながら食事を作らないといけないのも大変ですし、毎日規則正しい生活を送るのも大変です。

KIDS LINE 「緊急事態宣言に伴う保育園や幼稚園の休園等」に関する調査 https://kidsline.me/

「理解しているものの難しい・大変・困る」という声が寄せられていました。これらは一部の方の声であり、楽しんでやっていますよ!という方も中にはいらっしゃるのかもしれません。

両立を難しくする要因

シーソー
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リモートワークと子育ての両立が「できている」と判断する基準は人それぞれです。ここでは「自分がやるべき仕事(家事含め)は全て完了する」としましょう。

両立ができる人とできない人。これを分けるのは親のポテンシャルではありません。親や子どもを取り巻く「環境」「条件」だと考えています。いくつか例を挙げてみましょう。

子どもの状況

お絵かき
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分かりやすいのが子どもの年齢です。小中学生は放っておいても泣きわめくことはありませんが、未就学児は「かまって」攻撃が止まらなくなるケースがあります。

年齢に比例してラクになるわけでもありません!例えば、ミルクを飲めば数時間単位で眠ってしまう0歳児なら、仕事への支障は大きくないでしょう。

しかしイヤイヤ期真っ盛り・言語表現が未熟な2〜3歳頃の子どもの場合、仕事どころではありません。好奇心の権化のような1歳頃は、何をしでかすか分からないため目が離せず、当然仕事に集中できなくなります。

このように、子どもの年齢は両立の難易度に関わってきます。

もう一つの大きな要因が子どもの性格です。

活発な子どもと静かに遊ぶのが好きな子どもを横並びで語ることはできません。甘えん坊さんとそうでない子では、仕事に割ける時間が違ってくるはずです。

きょうだいの有無も関係します。

「友だちと遊ぶ」ことが好きな子は、いざ自宅で一人になるとお友だち役を親に求めるしかありません。もしも遊び相手になるきょうだいがいれば、親の出番は減るでしょう。

お昼寝の有無も影響が大きいですね!

子どもの昼寝の時間帯を狙ってオンラインミーティングの予定を入れたものの、自宅では頑なに昼寝をしない。そんなものです。うまくいきません。

規則正しく昼寝ができる子どもの場合は予定が立てやすいのではないでしょうか。

CHECK

子どもの生活スタイルや性格など様々な要素が両立の難易度に関わっている。

職場の理解や制度

ワークライフバランス
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自宅保育を並行する中で「避けたい業務」があります。例えばオンラインミーティングや期日が短いタスク、急ぎのタスクです。

特に社外とのミーティングは子どもが騒ぎ出さないか戦々恐々ではないでしょうか。このときだけは両親に子どもを預ける方もいるようです。

社外とのオンラインミーティングは別の社員に移し、代わりに細切れの時間で対応できる業務を担当する。業務量ではなく業務内容を変更することで、自宅保育とリモートワークの両立をサポートしてくれる職場があります。

また会社の制度が両立を後押しするケースも。例えばピクスタ株式会社の場合です。

産休、育休制度はもちろん、育児や介護従事者向けに時短勤務制度や、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、業務遂行が難しいメンバーに臨時特別休暇制度を設けています。また、エンジニア、デザイナーは裁量労働制、その他職種にはコアタイムのないフルフレックス制を導入しています。

ピクスタ株式会社 https://pixta.co.jp/

業務時間が柔軟に変えられるのは非常に助かります!子どもの機嫌が終始悪くて日中仕事が捗らなかったら、夜に時間を取ることができるのです。もちろん、睡眠時間を削ることにはなりますが……。

職場に「子どもが◯◯で」と伝えるのは言い訳をするようで気が引けるもの。同社のように「制度」として誰でも活用できるのは嬉しいですね。

家族の協力

デリバリーのピザ
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妻や夫、両親など家族総出で支え合うことができれば、自宅保育とリモートワークの両立はスムーズでしょう。しかし必ずしも協力を仰げる状況とは限りません。シングル家庭ではどうしても親一人で抱え込むことになります。

また夫婦ともにリモートワークなのに両立が難しく感じることも珍しくありません。例えば家事は妻に丸投げ、夫はオフィスワークとなにも変わらずリモートワークをしているようでは妻の負担が減りません。減らないどころか、自宅保育の負担が上乗せされるわけです。

「家族の協力」というと家事や育児の分担をイメージしがちですが、自宅保育とリモートワークの両立における協力とは「許容」ではないでしょうか。

少し掃除が疎かになっても、デリバリーを活用しても、保育園再開までは無理せずいこう。家族全員が「許容」の心を持てば、両立の難易度は下がります。

CHECK

家事にも「不要不急」の考えを!

正しい育児へのこだわり

タブレットを使う子供
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自宅保育・リモートワーク両立の難易度を上げる要因として無視できないのが「正しい育児」へのこだわりです。

KIDS LINEの調査に以下のコメントがありました。

(中略)子どもにも仕事中は静かにしていて欲しいためスマホやテレビに頼らざるを得ないのがジレンマです。

KIDS LINE 「緊急事態宣言に伴う保育園や幼稚園の休園等」に関する調査 https://kidsline.me/

スマホやタブレットは今のところ最強の「子どもが大人しくなるツール」です。しかし世の中の共通認識として、スマホや動画に頼る育児は「怠慢」とする考え方があります。

携帯電話がない時期に子育てをした世代の中には「動画ばかり見ていたら◯◯になる」という考えの方もいます。同じようにベビーカーがなかった時代の人は「抱っこしないなんて!」と思ったのではないでしょうか。

自宅保育とリモートワークが重なるイレギュラー下で重視したいのは次の2つだと考えます。

  • 子どもが楽しく過ごせる
  • 親が仕事に集中できる

これが叶うなら、時代とともに生まれた便利ツールを活用することは決して悪いことではないはずです。

どのコンテンツを見せるか、というのは別問題。頼ってはいけないというこだわりを捨てれば、自宅保育とリモートワークの両立がしやすくなるのではないでしょうか。

無理は続かない、だから無理しない

子どもの写真
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登園自粛要請を受け入れ自宅保育をするという決断は簡単ではなかったでしょう。登園させざるを得ない方は、家庭内や保育園にウイルスを持ち込まないように気を張っています。

自分ではなく子ども、家族、保育園、職場のことを気遣いながらリモートワークを行っている時点で、これまでとは違う負担がかかっています。

ここに「無理」を積み重ねる必要はありません。無理は長続きしません。

「今だけ」だからこそ無理せず過ごせるよう、「許容」を含めてご家庭内で話し合ってみてはいかがでしょうか。

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一帖半執筆工房代表。
フリーランスに転身後、ライターからエディター・マネージャー・GMに至るまで全てリモートワーク。
現在は企業のコンサルやディレクション、グラフィックデザインなど幅広く受託。
趣味は写真撮影とRAW現像とデジタルガジェットを見てニヤニヤすること。

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