相手の様子が見えない。だからコミュニケーションが取れない。
多くのリモートワーカーがこのような悩みを抱えています。
しかし筆者は「リモートだからできない」と諦めるのではなく、いかにしてリモートワークに寄り添うかが重要だと考えています。
「できない」ことを、ちょっとした工夫ひとつで「できる」に変えていく。
今回はリモートワークだからこその考え方や働き方など、メディア運営企業でのマネージャー経験を通じて見つけたことをまとめました。
リモート環境に適したチャットでのコミュニケーション術
相手の状況が見えにくいリモート環境において、人は必要以上にたくさんのことを想像してしまいがちです。
- こんなことを質問して迷惑にならないだろうか
- いま質問をしたら仕事の邪魔をしてしまうのではないだろうか
- 忙しいときに連絡したら嫌がられるだろうか
出社時なら相手の様子を窺うことができても、リモートワークでは想像するしかありませんから、どうしても「コミュニケーションを取る」こと自体のハードルが高くなります。
これはつまり、ハードルさえ取り除ければリモートワーク下でも円滑にコミュニケーションが取れるようになるということ。
ポイントは「いかに安心感を与えるか」です。
人は想像力を働かせることで、リモート環境では見えにくい相手の感情や温度感といった情報を補おうとします。
ただしここで想像力の使い方を間違えると、上司とのやり取りにおいて過度に委縮してしまったり、反対に傲慢な態度を取ってしまったりと、人間関係に悪影響を及ぼしかねません。
こうした「感情や温度感の読み違い」を防ぐためには、大袈裟な表現を用いるのが有効です。
ここでいう「大袈裟」とは、例えば「あなたは天才だ!」「我が社の誇りだ!」などわざとらしい褒め言葉を並べ立てろ、という意味ではありません。
- 何に対して褒めているか(怒っているか)
- どのような行動に助けられたのか(問題があったのか)
- なぜこのように褒めているか(怒っているか)
- 今後どのように行動してほしいか
チャットではこのように細かく項目をわけ、具体的な根拠を明示するのが効果的です。
面と向かって伝えるときよりもやや説明的にはなってしまうのですが、伝わりにくい感情や温度感をカバーするためには詳細な文字情報が不可欠。
こうして明確に伝えることで、言葉を受け取る側の気付きに繋がったり、モチベーション向上に役立ったりもするのです。
「連絡手段」以外のチャット活用術
リモートワークでは相手の様子が見えない不安のほか、「見られているかわからない不安」もあるでしょう。
例えばこちらのコラムでは、リモート環境でいかにして自分の「働きぶり」や「働く姿勢」を見せるか、について書かれています。
見せる側にとってはもちろんですが、見る側にとってもチャットは便利なツールです。
ただの連絡手段として使っているだけでは、非常にもったいない!
チャットの有用性を知り最大限に活用することで、リモート環境でのマネジメントにもプラスに作用します。
自分宛ではないメッセージこそ大切な情報源!
筆者はChatworkを使用していたのですが、こちらのチャットツールには「グループチャット」の機能がありました。
ここでは1対1のやり取りのみならず、複数名に対して同時にメッセージを送ったり議論を交わしたりできます。
このグループチャットのように複数名が出入りする場所では、ときに自分宛ではないメッセージが送られてきたり、無関係に見える話題が展開されたりするでしょう。
これらのメッセージを、あなたは読んだことがあるでしょうか。
もちろん自分宛のメッセージは重要度も優先度も高いですが、それと同じくらい自分宛ではないメッセージも大切にすべきだと考えます。
見えにくくなったものはチャットでのやり取りに表れる
評価される側は様々な方法で自分たちの働きぶりをアピールします。チャットは、そうした姿勢が明確に表れる場所のひとつです。
部下がきちんと見える化しているなら、それを漏れなく見に行くことが上司の務め。
上司には、部下が出した結果に「働きぶり」や「働く姿勢」を掛け合わせて、正しい評価をつける責任があります。
全てのチャットを確認するのは、そういった大切な情報を見逃さないようにするためでもあるのです。
顕在化しにくい問題やトラブルの種に、いち早く気付くこともできます。
リモート環境でもできる人間関係の構築術
リモート環境で1から人間関係を構築するなら、当然ながらリモートに適した方法を選ぶ必要があります。
「リモートではコミュニケーションが取りにくい」「関係をうまく構築できない」と感じている人も多いでしょうが、コツさえ掴めば難しくありません。
相手の顔色を窺う必要はない!
実は筆者、対面でのコミュニケーションが得意ではありません。
相手の顔色を窺いすぎてしまう性格で、「自分の発言が相手にネガティブな影響を与えていないだろうか」と、常に悪い想像をしがち。
指摘すべき場面でつい相手をフォローしすぎて、肝心の内容をきちんと伝えきれなかったこともありました。
筆者と同じような悩みを抱える人の多くが、おそらく「相手に嫌われることを過度に恐れる気持ち」を持っていると考えています。
そんなときに便利なのがチャット。
チャットなら良くも悪くも相手の顔が見えません。つまり、相手の顔色を必要以上に窺ってしまう心配も、ネガティブな想像をしてしまう危険性もないということ。
筆者のようなタイプの人にとって、相手の顔を見ずにやり取りができるチャットは、相手との関係構築に最適のツールなのです。
※もちろん、顔が見えないからといって相手を強く攻撃して良いわけではありません。メッセージが最終的に行きつく先は、自分と同じひとりの人間です。
大切なのは、相手に対する敬意を忘れないこと。それを守れば、相手を傷つけてしまうこと・相手に嫌われてしまうことを過度に恐れる必要はないのです。
ご機嫌取りはご法度
仕事していると「大変そうだな」「困っているだろうな」と、ときに相手の気持ちを汲んであげたくなるシーンに遭遇します。
そんなとき、マネジメント側が臨機応変にフォローすることもあるでしょう。
これ自体は悪いことではありませんが、例外的な対応をするときは何があってもルールに則って対応し、絶対に相手のご機嫌を取るようなことはしないでください。
一緒に仕事しているメンバーは、もちろん全員大切にすべき仲間です。
しかし「大切にすること」と「甘やかすこと」は違います。
どんなときも、基準は「全員に共通のルール」であって、当然ながら「優秀さ」や「企業への貢献度」ではありません。
困っているとき相談に乗ったり、アドバイスを送ったりすることはもちろん問題ありませんが、その相談内容がルールに反していたり、相手のワガママによるものだったりする場合は別です。
絶対に助けず、ルールに則った方法での解決を促してください。
マネジメント側は、個人の感情で動いてはいけません。会社の考え方を正しく理解し、常にその考え方に基づいて行動することが求められているのです。
大切にすること≠甘やかすこと
寄り添いの心が「できない」を「できる」に変えていく
フリーランスのリモートワーカーの場合、「クライアントの顔を知らない」というのは珍しいことではありません。
筆者も、実際に顔を合わせたことがあるディレクターはほんの一握り。ほとんどが顔どころか、声すら聴いたことのない相手でした。
そんな環境でも業務が円滑に進められていたのは、リモートワークの特徴に寄り添い、その環境に適したワークスタイルを確立できたからではないかと分析しています。
小さな心掛けが、リモートワークを快適にします。
やりにくさを感じている人はまず、リモートワークならではの特徴に歩み寄るところから始めてみてはいかがでしょうか。