仕事を依頼されたけれど、他の業務が詰まっていて、他の依頼が立て込んでいて、子どもが体調不良で、資格試験の勉強があって……。
こんなとき、お断りのチャットに何を書きますか。
社員・フリーランス双方をマネジメントするなかで、「お断り」の伝え方が上手な方は、仕事がうまくいく・途切れないことに気付きました。
今回は、リモートワークにおける「お断り」の伝え方について考えます。
相手によって伝え方を変えたほうがいい
フリーランスも社員も、限られた時間の中でたくさんの仕事をこなしており、すべての依頼を引き受けるのはなかなか難しいものです。
リモートワークではお断り=辞退をチャットで伝えることがほとんど。こちらがどんな表情で断っているか、相手は知りません。文章だけが、気持ちを語ります。
「そんなつもりで言ったわけではなくて……」が通用しない、テキストコミュニケーション。
依頼主の立場や所属によって、伝え方・断り方を変えるのがベストです。
社員の場合は社内からの依頼が多いですね。フリーランスの場合はクライアントや仕事仲間、つまり外部です。
社員が社内の依頼を断る場合
明日の12時までに、先月のデータをまとめてほしいんだけど(上司より)
- ◯◯プロジェクトの期限が今日なので、他業務は難しいです。
- ちょっとバタバタしていて、明日12時は難しいです。申し訳ありません。
社内なら具体的な理由を伝える①をオススメします。
どうしてもあなたに依頼したい業務かもしれない
あなたが優秀なデータサイエンティストで、この業務を任せられるのはあなただけなのかもしれません。
あるいは、あなたの丁寧な仕事ぶりを知っていて、依頼している可能性もあります。
「できない理由」を聞いた上司は業務の優先度を勘案し、プロジェクトには別の社員をアサインするという判断が可能です。
依頼を「お断り」する文章なのに、実は上司に判断を委ねていることにお気付きでしょうか。
忙しいのは皆同じ
②の「バタバタしていて」は、つい口にしがちな言葉ではないでしょうか。「バタバタしている」は、タスクをたくさん抱えていて忙しいといった意味で使われています。
何となく「忙しい」ことはわかっても、何がどれぐらい忙しいのか、いつまで忙しいのか、相手に伝わりません。
また「忙しい」「バタバタ」という言葉を見て、上司はどう思うでしょうか。
「忙しいのはみんな同じじゃないか……」
「忙しい」を理由に断ると「自分は忙しい」の意味で相手に伝わります。相手の忙しさを軽視している印象を与えるのです。
本当に、会社の中であなたが一番のタスクホルダーかもしれません。だとすれば、忙しさの中身をぜひ伝えてください。
現在担当している業務やタスクのリストを、上司に送りましょう。名がないタスクは、業務内容を簡潔に書いておけばOK。
「現在担当しているタスク一覧です。△△の優先度を下げて差し支えなければ、ぜひ担当させてください」
優先度を自分で考え、提案し、あなたの依頼をぜひ引き受けたい! という思いを伝えましょう。
対面では即レスが求められる場面でも、リモートワークなら考える・準備する時間が取れる。大きなメリットですね!
フリーランスがクライアントの依頼を断る場合
明日の12時までに、バナーの作成を10件、お願いしたいのですが(クライアントより)
- 他のクライアント案件があるので、難しいです。
- 子どもが風邪気味なので辞退させてください。
- 資格試験の勉強をしたいので、今回は辞退させてください。
- 申し訳ありませんが、明日12時納品は難しいです。
④はとてもそっけなく、引き受けられない理由がわかりません。しかしフリーランスなら④がオススメです。
言葉は受け取る側の解釈優先
フリーランスは複数のクライアントと契約するのが一般的ですから、①の状況は日常茶飯事です。先方に伝えても問題ありません。
ただし、クライアントの立場で考えてみるとどうでしょうか。「他のクライアントを優先している」と解釈される可能性があります。
他案件の締切や業務量といった事実はどうであれ、クライアントとの良好な関係を維持したければ、あえて「他クライアント」は書く必要ナシかもしれません。
理由によって結果は変わらない
②はよく見かける文章です。同居家族やペットといった自分以外の事由で対応が難しいことはあります。③の試験勉強は②と違い、自分自身の事由です。
クライアントによっては、以下のように判断する可能性があります。
- ①と②は仕方ない
- ③は自己都合、どうにかなるのでは? 仕事を優先すべきでは?
しかしこれは公平性に欠ける判断だと考えます。
やむを得ない理由でも、自己研鑽のためでも、なんとなく気分が乗らなくても、遊園地に行くためでも、クライアントの依頼を受けない「結果」は同じなのですから。
「見えない」「知らない」ことを味方につける
- 小さいお子さんがいる
- 他クライアントの仕事が忙しい
- 本業がある
こうした情報は、訊かれるまで伏せておくのが無難です。つまり④ですね。
クライアントは、いつでも仕事を引き受けてくれる方、柔軟に対応してくれる方を優先します。
「◯◯なので」によるお断りの回数が増えると、クライアントはどう感じるでしょうか。
あの人はお子さんがいるから突発で納期変更が生じるかもしれない。あの人は他案件を優先しているから、報酬を上げないと断られる……。
依頼をためらうようになり、依頼の頻度が減っていきます。これはもったいない。
見せなくていいこと、知らせなくていいことはあえて表に出さず、「見えない」「知らない」を味方につけることが重要です。
『見せなければ見えない』
これはリモートワークの特権ですね。
お断り3点セット
とはいえ、理由の有無にかかわらずひたすら断り続けていたら依頼は減っていきます。断る場合は、以下の3点をチャットで送るといいのではないでしょうか。
- 依頼に対するお礼
- シンプルにお断り
- いつなら対応できるか
フリーランスは依頼がなければ報酬が発生しません。まずは依頼に対してお礼を伝えたいですね。
いつもご依頼ありがとうございます。申し訳ありませんが明日12時納品は難しいです。17時でしたら対応できますが、いかがでしょうか。
対応可能な日・期間を伝えても、タイミングよく業務が発生するとは限りません。そこは期待しないでおきましょう。
でも「引き受けられない理由」よりも「引き受けたい!」という意向はうれしいもので、記憶にも残りやすいんです。
「そういえば◯◯さん、手が空くって言っていたような」と頭の片隅に残っていれば、別の依頼が舞い込んでくる可能性もあります。
※育児・介護の有無や本業の状況を把握したうえで業務を依頼するクライアントもいます。相手のスタンスに合わせて対応しましょう。
社員が社外の依頼を断る場合
取り引き先に、タスクの詳細を伝えても意味がありません。
「対応が難しい」「その日は難しいので◯日のご都合はいかがでしょうか」、この辺りがいいですね。
「忙しい」は禁句だと思ってください。「自分は・弊社は忙しいので」と主張しているようなものです。
リモートでも対面でも同じですが、文字として残るチャットやメールでは、より慎重さが求められます。
「やむを得ない理由」が与えるマイナスイメージ
とあるクライアントに、プライベート(そのクライアント案件と無関係)な理由をチャットに書かないようにと言われたことがあります。
子どもの風邪。本業。高熱。親しい方とのお別れ。
これらはすべて「言い訳だから」と言われて驚きました。極端にも程があると感じ、業務を辞退しようと思ったぐらいです。
このクライアントはなぜ「言い訳」という悪い捉え方をするのでしょうか。
『やむを得ない理由はチャットに書いて、知られたくない理由は書かないって、おかしいじゃないですか』
風邪をひいたときは「体調不良で」と書く。しかし日帰り温泉に行くときは「温泉に行くので」とは書かず「私用で」「体調不良で」と書く。
どちらも「できない」結果は同じなのに、できなかった「のは仕方ない」と相手に許してもらおうとしている、という考え方でした。
かなり極端で稀なケースかもしれませんが、こういうクライアントもいるのだと知っておいて損はないでしょう。
向こう側にいる「人」を意識
リモートワークでは相手の顔が見えず、「依頼を断る」ことだけに意識が向きがちです。そうすると礼儀を欠いたお断りになるリスクが高まります。
依頼を受けたら「依頼をしている人が画面の向こうにいる」ことを意識してみてください。
「業務」と書かれた段ボール箱の授受ではなく、段ボール箱を持っている人と言葉のやり取りをしていることをぜひ、お忘れなく。