筆者はこれまでチームリーダーやマネージャーとして、たくさんのフリーランスとコミュニケーションをとってきました。
その中には「仕事を任せたい」「安心して依頼できる」と感じられる人がいる一方で、「任せられない」「依頼するのは不安」と感じる人もたくさんいました。
今回の記事では安心して仕事を任せられない「要注意フリーランス」にスポットを当て、共通するNGポイントをご紹介します。
- ルールを守らないフリーランス
- 自分の都合ばかりを優先するフリーランス
皆さんのより良いフリーランスライフに、ぜひお役立てください!
ルールを守らないフリーランス
仕事をするうえで、ルールは守らなければなりません。
これを当たり前のことだと認識しているフリーランスがほとんどですが、稀にそのルールを守らない・無断で変えようとするフリーランスがいます。
具体的な事例を元に、ルールを守る意味について考えてみましょう。
NG行動の例
マネージャー・リーダーという立場上、「ルールの遵守」については敏感にアンテナを張ってきました。
その中で見かけた2つのNG行動を、おにぎり作りを請け負っているフリーランスRさんの例に置き換えて紹介します。
- 自己都合でルールを変えようとする
- 他のクライアントルールを持ち出す
自己都合でルールを変えようとする
自己都合でクライアント側のルールを変えてはいけません。
たとえば、おにぎりを作る手順(ルール)が以下のように定められていたとしましょう。
- 手に塩をつけて握る
- 具材は10グラムずつ詰める
- 10回程度やさしく握る
Rさんがこのルールどおりにおにぎりを作ると、1個あたり5分かかります。
Rさんは100個作って納品することになっていますが、作業時間の確保が難しいようです。
Rさんの考え
今月は仕事を詰めすぎて作業時間が確保できない……。100個の納品は間に合わない!
作業時間を少しでも短縮するために「①手に塩をつけて握る(所要時間2分)」を省こう。
この方法によってRさんは納期までにおにぎりを100個納品できました。
しかしRさんが納品したおにぎりは、クライアントが決めた手順を守っていない=ルールに違反したおにぎりです。
クライアントが確認した結果、品質が基準値を下回ったため成果物としては認められませんでした。
作業時間を確保できないのは、スケジュール管理が甘かったRさん自身の責任です。それを「ルール違反」という手段で解決してはいけません。
他のクライアントルールを持ち出す
複数のクライアントと契約している場合、業務内容が同じでも他社のルールを勝手に適用してはいけません。
たとえばRさんがM社・K社と契約し、どちらからも「塩むすびを作る」業務を請け負っているとしましょう。
どちらも「塩むすび」が納品物であり、使う材料も同じです。
しかし塩味の付け方が異なっており、それぞれルールを定めています。
- M社→ひとつずつ手に塩を付けて握る
- K社→ご飯に塩を混ぜ込んでから握る
Rさんは、K社のやり方のほうが効率的だと感じています。
Rさんの考え
いちいち塩を手に付けるM社より、ご飯に塩を混ぜるK社のやり方のほうが効率がいい。
M社的にも早く納品してほしいだろうから、K社のやり方で作って納品しよう!
M社が塩むすびの品質をチェックしたところ、基準を満たしていないことが判明。M社はおにぎりを受け取ることができません。
塩むすびのプロであるM社は「手順に沿って作っていない」と気付き、Rさんに状況を確認しました。
M社とRさんのやりとり
M社:塩を手に付ける工程を省いていませんか?
Rさん:省いています。他社は先に塩を混ぜてから握っています。このほうが絶対に効率がいい。だから今回は早く納品できたんです。
もちろんこの反論はNG行為です。
M社が定めているルールは、M社の知見や経験に基づいて作られたものであり、意味があります。
非効率的だと感じても、クライアントが何かしらの根拠に基づいて定めている独自ルールを、他のクライアントに押し付けてはいけません。
マニュアルや手順書の内容は通常「社外秘」にあたるため、他のクライアントに共有してはいけません。
ルールには必ず意味がある
ルールには根拠がある、と書きました。「このルールはなぜ必要なのだろう」と首を傾げるものにも必ず守るべき根拠・理由が存在します。
たとえば先ほど触れたM社・K社の「塩味の付け方」に着目し、どんな根拠があるか考えてみましょう。
- M社:ひとつずつ手に塩を付けて握る
→→おにぎりの表面だけに、程よい塩味を付けるため - K社:ご飯に塩を混ぜ込んでから握る
→→お米全体に塩味を満遍なく付けるため
「塩味の付け方」というルールにはこうした根拠があるのです。これ以外のルールも深掘りしていくと「塩にぎり作り」に対するクライアントの考え方・姿勢が見えてきます。
- M社:量より質。丁寧に作られたおにぎりが売り。
- K社:質より量。大量生産で安く提供するのが売り。
ルールに込められた意味が理解できればクライアントのスタンスが正しく理解でき、より良い関係が築けるのではないでしょうか。
自分の都合ばかりを優先するフリーランス
時にはクライアントに対して、はっきりと自分の意見を伝えなければならない時があります。
業務を円滑に進めるために必要なことは伝えたほうがいいでしょう。
しかしごく稀に、自分の意見を伝えただけなのに「わがまま」な印象を与えてしまうフリーランスがいます。
具体的なNG事例を元に、自分の都合を優先しない「物事の捉え方」を考えてみましょう。
NG行動の例
「自分の意見をはっきり伝えること」と「ただのわがまま」、いったい何が違うのでしょうか。
- 自分勝手な主張をする
- 「受け入れてもらって当たり前」という態度をとる
2つのNG行動を、おにぎり作りを請け負っているフリーランスRさんの例に置き換えて紹介します。
自分勝手な主張をする
自分本位の主張を突き通そうとするのは当然NGです。
M社では、ツナマヨおにぎりを作るためのチームが結成されました。今月のチーム目標は「1ヶ月にツナマヨおにぎりを500個作ること」です。
Rさんをはじめとするチームメンバーは、1日あたりの作業数をリーダーのZさんにチャットで報告することになりました。
Zさんはリーダーとして進捗管理を行います。
メンバーRさんの考え
チャットでの報告が苦手で、文面を作るだけで時間がかかってしまう。
この時間にもツナマヨおにぎりをもう1個作れるはずだ!
RさんからZさんへの訴え
進捗報告の時間が勿体無いから、自分だけは報告頻度を週1回にしてほしい。
そうすればツナマヨおにぎりをより多く作れてチームに貢献できる!
リーダーZさんの考え
チャットで報告してもらった数値は手書きの表に書き込んで管理しているが、あまりにも効率が悪いし計算ミスが出やすい。
Googleスプレッドシートで集計表を作り、共有して運用したい。
Zさんからクライアントへの訴え
スプレッドシートの集計表を共有してメンバーが直接数値を書き込めば、メンバーは報告の手間が減り、浮いた時間を実務に当てられる。
リーダーは計算ミスが減らせるうえ、よりリアルタイムに近い数値が報告でき、M社にとってもメリットが大きい。
RさんとZさんの主張には、明らかな違いがあります。
Rさんの主張は「自分が」苦手だから「自分だけ」特別扱いしてほしい、という自分中心のものですね。
一方でZさんの主張は「チームメンバーの」負担を減らし、「クライアントの」メリットが増えるシステムに変えたい、というチームや組織全体を意識したものです。
ではRさんは効率の悪さを我慢しながら業務を続けるべきなのでしょうか。そんなことはありません。
たとえば報告文面をテンプレート化して毎日コピペするだけにすれば、報告にかかる時間が減らせます。Zさんは「集計表を作る」という工夫をしました。
こうした工夫をせず自分の都合だけを優先して主張することは、ただのわがままです。
「受け入れてもらって当たり前」という態度をとる
どんなに余裕を持った計画を立てても、不測の事態は避けられません。
ときには怪我や病気といった予期せぬアクシデントで業務に支障を来すことがあります。
しかし予期できない・避けられないから「許してもらって当たり前」という態度をとるのはNGです。
ここでは予測しにくい「子どものトラブル」による納期遅延を例に取り、考えてみましょう。
子どもに関するイレギュラーは予期しにくく、他人に世話を任せるのもなかなか難しいものです。
- 子どもが突然体調を崩した
- 子どもの風邪がうつって自分も体調不良になった
- 感染症の影響で休園・休校になり、子どもが自宅待機になった 等
ある程度年齢が大きくなれば問題ないかもしれませんが、自宅保育が必要な未就園・未就学児や低学年の子どもがいると仕事に影響が出るでしょう。
こうした「避けられないアクシデント」に理解があるクライアントは、納期を調整してくれることもあります。
ただし以下は念頭に置いておく必要があるでしょう。
- すべてのクライアントが納期調整を快く受け入れるわけではない
- クライアントが「快く」対応しているとは限らない
納期遅延が認められないからといって「子どもを放っておけというのか」と怒りをぶつけたり、言い訳したりすることは絶対にNGです。
多くの視点で物事を捉えよう
仕事は自分一人でできるものではありません。「自分」視点と「他者」視点、常に複数の視点で物事を捉えるように心がけましょう。
この視点が「自分」だけに偏ると、主観的かつ自分中心の考えしかできず「ただのわがまま」になってしまいます。
また強引な主張を繰り返し、押し付けることも「ただのわがまま」です。
筆者の経験則「自分都合で考える人」の特徴
筆者の経験上、自分都合の主張が強い人には共通点があります。
『ある程度継続的に業務をこなし、ルールが定着し始めたフリーランス』
業務の経験・知識・ルールが身についたからこそ、自分の利益を優先した考え方もできるようになります。これが行き過ぎた結果「わがまま」になってしまうのです。
自分は大丈夫?行動を振り返ってみよう
筆者も自分の過去を振り返ってみると、今回ご紹介したようなNG行動をしてしまったことがあります。
幸い、そのときは周囲からの指摘で気付くことができましたが、すべてのフリーランスが周りから指摘してもらえる環境にいるとは限りません。
大切なのは、NG行動を自分が自覚し、改善することです。そのためにも時々自分の行動を見つめ直し、NG行動をとっていないか確認してみましょう!