「チャットは文字だけのやり取りだから難しいよね」というリモートワークあるあるにお悩みの方は数多く、特にオフィスワークからリモートに移行した方は慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。
では、リモートワーク歴が長いフリーランスは悩みがないのか? そんなことはありません!
クライアントごとにチャットツールも運用方法も異なりますし、どういった温度感で接するべきか試行錯誤の連続です。
ビジネスチャットは使い方を間違えると仕事のミスを誘発し、信頼を失いかねません。この逆もまた然りで、文字だけのやり取りでも信頼を寄せたくなる方が一定数います。
ビジネスチャットで信頼される人・されない人にはどんな違いがあるのでしょうか。
今回は筆者の経験をもとに、4+1つの観点から「チャットで信頼される人」を考えてみます。
Webコンサル企業のフリーランスPM/GMとしてメディア運営・マネジメントを経験。現在は校正や文章コンサル、Webディレクション・デザインなど活躍の場を広げている。
信頼される人のチャットは誤字・脱字が少ない
チャットの誤字・脱字が多い人は信頼されません。私はあまり信頼を置けませんし、一緒に仕事していたサブマネージャーも同じことを言っていました。
誤字・脱字が自他に与える影響と、文面読み直しの重要性を今一度考えてみましょう。
- 誤字・脱字は自分の評価を下げている
- 誤字・脱字は相手の仕事を邪魔している
- 面倒な時こそ見直しが必須!
誤字・脱字は自分の評価を下げている
対面コミュニケーションにはないチャットの強みは「冷静に読み直せること・送信後に修正できること」だと考えています。
ミスが防げる・修正できるツールにもかかわらず、誤字・脱字だらけのメッセージが送られてきたら……相手はどう感じるでしょうか。
- ほんの数秒読み返す余裕もないのだろうか。
- 外部に送る重要なメールも見直しせず送っているのでは!?
- 私宛のチャットなんて「伝わればいい・時間なんてかけていられない」と思っているのだろうか。
- そういえば昨日も数字が間違っていた。慎重さが足りないのでは?
残念ですがこういった印象を与えてしまいます。
とはいえ、誰だってミスはしますから、たった1回の誤字・脱字で信頼を損なうことはありません。
どの投稿を見ても誤字・脱字があったり、量が多かったりすると印象に残りやすく、ミスが多い・ミスに気付かない・ミスを放置する人という評価に繋がります。
誤字・脱字は相手の仕事を邪魔している
誤字・脱字があっても内容が伝われば問題ナシ! と言い切れるでしょうか。
誤字・脱字があると、読む流れが一度止まります。相手は「正しくは○○だな」と認識を改めたうえで読み進めます。ほんの一瞬の「止まる」時間は、本体不要なものではないでしょうか。
また、たった1文字のミスが誤読に繋がるかもしれません。
以下に極端な例を挙げてみました。
誤字例
正)AさんはBさんと迎えに行くそうです。
誤)AさんはBさんを迎えに行くそうです。
→Bさんは外回りの日だっただろうか。Aさんは、Bさんを迎えに行った足で先方のオフィスに向かうのか?
このように「正しい意味を推測して理解する行為」を相手に強いることになり、相手の時間を奪うのです。
面倒な時こそ見直しが必須!
たった数十秒の見直しが「面倒だ」と思ってしまうのは、どんな時でしょうか。
- めちゃくちゃ忙しい時
- 文面が長い時
忙しい時は注意力が散漫になり、誤字・脱字が発生しやすい状態です。誤字がそのままPCの予測変換に組み込まれると目も当てられません。
また文面が長い時も同様、長くなるほど誤字・脱字が発生しやすくなります。
「長い」と感じるのは相手も同じこと。長いうえに誤字・脱字だらけでは、信頼も評価もガクンと落ちるでしょう。
面倒な時こそ見直しを! 見直しの負担が軽くなる方法を2つ紹介しておきます。
長い文面は整える
文面が長くなるなら箇条書き(リスト)を取り入れてみてください。箇条書きは文章を短く切り詰めるため文字数が減り、誤字・脱字が発生しにくくなります。
また区切り線や項分け・番振り(1. ○○について など)で整えると見直しが苦になりませんし、相手も読みやすいでしょう。
校正ツールやAIツールに修正してもらう
重要な文章を送る場合、私はATOKクラウド校正で誤字・脱字をチェックしています。最近はChatGPTに校正させる人も多いようですね。
またWord(Microsoft Office)の校正機能を使うのもアリですね!
ツールを使うと、誤字・脱字だけでなく敬語や思い込みによるミスも拾えるので、かなり効率的です。
自分の時間を惜しんで相手の時間を奪うことがないように心がけを。
信頼される人はチャットのレスポンスが速すぎない
チャットのレスポンスはとにかく早いほうがいい、とは言い切れません。
即レスを推奨するクライアントもいるので一概に言えませんが、レスが早い「だけ」にならないように以下の項目を頭に入れておきましょう。
- レスポンスが早い「だけ」にならないようにしよう
- リモートワークは「今すぐ」が苦手だと理解しよう
- 返信より「確認」を先にしよう
レスポンスが早い「だけ」に要注意
クライアントから業務依頼がチャットで届いたとしましょう。手順書や参考資料が添付してあり、文面もボリューム満点。納期は短いようです。
連絡を受けた直後に「承知しました!」と返信したら、クライアントはどう感じるでしょうか。
- 注意書きは読んだのかな。
- 短納期だけれど間に合うのだろうか。
- 初めての業務なのに質問はないのだろうか。
レスポンスが早いうえに納期どおり正確に業務が遂行できるなら、信頼はうなぎのぼりです。
しかしレスポンスが早いだけで、納期間際になって矢継ぎ早の質問をするような人は信頼されないでしょう。
「今すぐ」が苦手なリモートワーク
相手の状況が見えないリモートワークにおいて、相手に「今すぐ」を求めないのがセオリーだと思っています。
先ほどの例でクライアントが求めているのは即レスではなく、依頼内容を確認したうえでの受託可否返信、あるいは成果物の納品です。
即レス以降音沙汰がないため順調に業務が進んでいると思いきや、納期間際になって……。
手順書に書いてある○○はどこにありますか? 明日納期なので今すぐ回答いただきたいです。
クライアントにも都合があり、すぐ回答できるとは限りません。もしかすると不在かもしれません。そして翌日。
昨日チャットを送った○○の件、回答いただけなかったので納品できません。
このケースでは、音沙汰がない=順調と判断して状況確認を怠ったクライアントのミスでもあります。
とはいえ、依頼を受ける側は手順書や資料を一読して、業務遂行に必要な情報が揃っているか確認する必要がありました。
まずは内容を確認!
「承知しました!」の即レスをする前に、チャット文面のみならず添付ファイルやリンクなどすべて確認しましょう。不明点ナシと判断してから返信すればいいのです。
即レス派の人は、チャットの内容を確認してから改めて返信する旨を伝えましょう。チャットそのものは受け取りましたよ、と相手に伝える「意味のある即レス」です。
なお、チャット送受信は「開く・読む・考える・返す」のちょっとした時間が積み重なっていくので、質問はできるだけ1つの投稿にまとめて、やり取りの回数を減らすよう心がけてみてください。
相手にとっても自分にとっても時短になります!
チャットを読んで何を承知したのか、伝えよう。
信頼される人はチャットで不平・不満を漏らさない
時として特定の誰か対する不満や叱責が文章化され、チャットのスレッドに流れていくのを見かけます。
第三者がこうした投稿を目にできてしまうのは、情報共有スピードを追求するビジネスチャットの特徴といえるでしょう。
不満や叱責の理由がどんなに正しいものでも、多くの人が閲覧するチャットで特定の誰かを吊し上げるような行為に好感を抱く人はいないはずです。
ビジネスチャットは鍵付きの閉鎖空間ではない
チャットのやり取りで信頼を勝ち取る人は、ビジネスチャットの仕組みをよく理解しています。以下はChatworkの例です。
- メッセージを投稿する「場」は2種類:1対1のダイレクトチャット・複数人が参加するグループチャット
- グループチャット上の権限は3種類:閲覧のみ可能・投稿可能・参加者の追加や設定変更可能
- 契約形態は4種類:個人契約の無料/有料プラン・組織契約のビジネス/エンタープライズプラン
グループチャットには管理者が追加した人のみが参加でき、後から追加された人は過去ログまですべて閲覧できます。管理者が一人ひとり追加するのではなく、参加リンクを共有して大人数を一斉に追加することも可能です。
参加者が追加されても通知されませんし、追加ログは非表示にできるため「あの人も参加していたのか!」と後から気付くことも……。つまり、X(旧Twitter)の鍵付きアカウントのような閉鎖性はありません。
1対1でやり取りするダイレクトチャットなら安心、と思いきや!? Chatworkにはエンタープライズという組織向けの契約プランがあり、上位権限を持つ人はダイレクトチャットを閲覧できてしまうのです。
文字としてログが残るビジネスチャットに不満や批判を書き込むリスク、おおよそおわかりいただけるかと思います。
クライアント支給アカウントはクライアントのもの
Chatworkの無料プランは制約が多いため、クライアントによっては組織契約アカウントに追加してくれることがあります。とはいえユーザー名もメールアドレスも変わりません。
しかし組織契約アカウントは有料であり、クライアントが費用を負担しています。そのアカウントを使って私見で不満を連ねたり人を攻撃したりするのは見過ごせません。
無料アカウントなら何をしてもよい、ということではありません。クライアントが立ち上げたグループチャットに参加しているのなら、クライアントに場を借りているようなものです。
自社の情報共有の場に、空気を悪くするような投稿が文字として残るのを、クライアントは望まないでしょう。
不平・不満をどう調理するかが信頼の分かれ目
仕事をしていれば多かれ少なかれ不満は生じます。
しかしフリーランスは単独で仕事しているため、不満をぶつける場がなく、モヤモヤし続けるかもしれません。
こんな時は「不平・不満」というマイナスのベクトルをプラスに向けてみませんか。
現状をより良くしたいという思いを持ち、具体的な提案ができる人は組織に必要です。
特にリモートワーク下では視野が狭くなりがち。その中で問題点をすくい上げ、誰もが目にするチャットで具体的な提案ができる人は信頼が厚くなります。
作業スピードが遅いAさんに対する不満
Aさんは作業が遅くていつも期日ギリギリだし、ミスばかりなので頼みたくないんですよね。
作業が早い人と遅い人で2日ほど差があるので、早い人に作業のコツを聞いて共有するのはどうでしょうか。
差し戻しが多くて期日内にデータが揃わないことがありました。もう1人追加でアサインすると余裕が出ますが、いかがでしょうか。
仕事の遅さを日数・数値という共有の物差しで伝えると納得性が高まります。不満を「問題点」に置き換えるイメージです。もしアイディアがあるなら添えて、考えつかなければ「改善案がパッと浮かばない」と素直に伝えるとよいですね。
返信が遅いディレクターBさんに対する不満
Bさんからの連絡が遅くて仕事が進みません。どうしてこういう人を担当に付けるんですか? 仕事のスタートが遅れるのでBさんを外してほしいです。
皆さん忙しいなかこまめに連絡するのは大変だと思うので、全体向けの連絡事項が確認できるチャットや掲示板があると助かります。
問題は重要な連絡が受け取れないことです。Bさんの名前を出さなくても、問題と改善案は伝わります。たとえBさんがこのチャット投稿を見ても、心を痛めることはないでしょう。
マイナスをプラスに変える提案が信頼度を高める。
信頼される人は質問チャットが少ない
ビジネスチャットは連絡事項の共有だけでなく、質疑応答の場でもあります。グループチャットに投稿した質問・回答は、別の誰かの仕事を助けるかもしれません。
しかし質問の数が増えれば、あるいは意図がつかめない質問が増えれば回答に時間がかかり、質問する側・される側の仕事が滞ります。
そのため、チャットで信頼される人は何でもかんでも質問しませんし、質問を書き連ねるだけの投稿にもしません。
わからなければ質問する
わからないことはどんなに考えてもわかりません。「3分考えてわからなかったら質問」という言葉を耳にしますが、1分考えて緒さえつかめなければ3分考えてもわかりません。
こうしたケースでは「早めに質問」が鉄則。相手に「今すぐ」を求めずに済むよう、時間に余裕を作って質問を投稿しましょう。チャットを目にした別の人が回答してくれる可能性もあります。
このように、質問の仕方を工夫すれば信頼を損ねることはありません。
分かっているなら質問しない
どんなに優秀な上司でもミスをします。
AチームのリーダーはBさんなのに「AチームのリーダーCさんに報告」と書かれていたら、書き間違いだなと捉える人が大半でしょう。
しかし……。
「AチームのリーダーはBさんです。Bさんで間違いないでしょうか」
ミスするほうが悪い! というのは一理ありますが、明らかに書き間違いだとわかるならそのままスルーすべきでしょう。
なぜなら上司が「Bさんの間違いでした」と返信するまでの間、質問者は仕事の手を止めることになります。上司も返信のためにわずかながら時間を使います。
リモートワークにおいて「チャットの往復」が増えるほど仕事の効率は落ちていくのです。
自己判断の精度と信頼度は比例
質問や確認事項の返信待ちを減らすにはどうしたらいいのでしょうか。答えは簡単、自己判断で進めることです。
経験則や一般常識に照らし合わせて判断できるなら、自己判断で仕事を進めたほうがいいでしょう。
ただし「こうだったので、こうします」という報告をお忘れなく。もしも自己判断が間違っていたら上司から返信が来るでしょうし、チャットを見ている別の人がアドバイスをくれるかもしれません。
自己判断は繰り返すうちに精度が高くなっていきます。そうすると質問に費やす時間を業務にあてることができ、仕事の効率が上がります。
チャットの文面で仕事を1から10まで説明するのはとても大変なこと。ある程度の自己判断とその報告ができる人は評価が高くなり、信頼も厚くなるのです。
過去の投稿を検索すると疑問が解決することも。
感謝のひと言が信頼を底上げする
フリーランスになって以降、ビジネスチャットやその他メッセージツールで多くのクライアント・フリーランスと接してきました。
そのなかで、信頼が置ける人の投稿には共通点があることに気付きました。それは「感謝のひと言」です。私も意識的に取り入れています。
対面ならすぐ終わる簡単な説明を文章化するために、相手がどれほどの時間をかけているか、どれほど書き直しているか、こちらからは見えません。相手が費やす労力・時間が見えないなら、せめて想像しましょう。
仕事そのものを100%の力で遂行することは誰にでもできますが、相手の顔が見えないビジネスチャットにおいて「仕事以外」に目を向けられる人はそう多くないのが実情です。
ですからチャットに感謝のひと言が添えられていると「細かな配慮ができる丁寧な人だな」と感じますし、気持ちよく仕事ができます。「それっぽっちのことで……」のそれっぽっちをわざわざやるかどうかが分かれ目ですね!
それっぽっちのことで信頼が底上げできるわけです。ぜひ今日から取り入れてみてください。