リモートワークを開始して気付くのが「電気代の高さ」です。特にエアコンを稼働させる夏・冬!どこかで「電気漏れ」でもしているのでは?と思ってしまいます。
冬場は厚着すれば乗り切れますが、夏はそうも行きません。電気代を気になるからといっても扇風機では歯が立ちません。ミストを噴射させる冷風扇はミストに当たる距離を保つ必要がありますし、湿度が上がります。
近年の酷暑はエアコン必須。エアコンなしで乗り切ろうとすると、場合によっては命の危険を伴います。
今回とりあげるスポットクーラーは導入コストが低く、電気代も安いという理由でリモートワークのお供として脚光を浴びています。実は筆者、昨年スポットクーラーを購入して真夏を乗り切った1人です。
スポットクーラーって本当に涼しいの?電気代は?お手入れは?筆者の家ってエアコンないの?
そんな疑問にREMO-zine編集部・中山が実体験を踏まえてお答えします!
スポットクーラーは涼しい!けれど電気代を下げるのは難しい
結論からいえば、ポータブルクーラーは涼しいです。設置場所や使用方法を工夫すれば快適に夏を乗り切ることができます。最新型の扇風機とスポットクーラーで迷っている方は「涼しさ」を優先するならスポットクーラーです。
しかし涼しさを感じるには「工夫」が必要ですし、使用環境によっては電気代を下げるのは困難です。
スポットクーラーは以下の方におすすめします。
- 冷やしたい部屋が狭い
- 冷やしたい部屋の周りに窓がある
- 冷やしたい部屋の周りに暑くなってもいい部屋がある
- リモートワークの短期間だけ使う部屋なのでエアコンは設置したくない
- エアコンがない・設置できない
スポットクーラーで酷暑を乗り切るために必要な工夫や設置環境をご紹介します。
スポットクーラーは排熱処理が最重要課題!
「電源をオンにすればどこでも涼しくなる」というわけではありませんし、エアコンと同等の手軽さやパワーを期待しないほうがいいでしょう。
スポットクーラーはよく「エアコンの室内機と室外機をドッキングさせた冷房」などと表現されます。まさにその通りで、形状が違えど空気を冷やす原理は同じです。
エアコン(冷房)は外気を取り込んで冷たい空気と熱い空気に分け、冷たい空気を室内へ、熱い空気を室外へ放出します。では室外機がないスポットクーラーはどこから排熱するのでしょうか。部屋の中に排熱したら意味がありません。
実はここがポイント。スポットクーラーで夏を乗り切るには「排熱の処理」が最重要課題です!
スポットクーラーの排熱処理問題
筆者が購入したCORONAの「どこでもクーラー」は本体前面と背面にそれぞれ空気の吹出口があります。前面からは涼しい風、背面からは排熱です。
この排熱を部屋の外に出さなければ、いつまで経っても部屋は涼しくなりません。
どこでもクーラーの場合は布製の排熱ダクトが付属しています。これを背面に取り付け、ダクトを通じて屋外に排熱します。つまりダクトが届く範囲でしか使えないと思ってください。
あるいは、背面の排気口をうまく室外に向けることができれば問題ありません。
筆者は部屋を簡易的に間仕切りし、作業スペースに冷風、空きスペースに排熱という形で使用しています。この形にたどり着くまでは本体をベランダに出してみたりダンボールで風の通り道を分断したりと紆余曲折がありました。
こうした手間がかかることはぜひ知っておいてください!
スポットクーラーの排熱漏れ問題
排熱がうまくできてもなぜか暑い。確かに冷風が出ているのに、それを取り囲むように熱気を感じる。
実はスポットクーラーのパーツとパーツの隙間や、排熱ダクトの取り付けスリットから排熱が漏れていたのです!取り急ぎガムテープで隙間を塞ぎ、ひと夏を超えました。
隙間を塞いでも暑さが消えない場合はダクトそのものの熱が影響しています。
スポットクーラーの排熱は想像以上に高温です。洗濯物の乾燥に使えるくらいですからダクトとその周囲も熱くなります。ダクトそのものをできるだけ屋外に出したほうがいいでしょう。
スポットクーラーは使用範囲を限定するのがベター
北海道在住者に話をきいたところ、今ほど夏の暑さが厳しくなかった時代はスポットクーラーを自宅に置く方がちらほらいたそうです。
しかしそれも今は昔のこと。現代の酷暑下で家族が集う広いリビングをガンガン冷やす役割を、スポットクーラーに任せるのは難しいと思ってください。
もちろん家庭用のスポットクーラーに限った話です。業務用のパワフルなスポットクーラーを適切な排熱で使用すればまた違ってきます。ですがパワーが高くなれば排熱も増えてしまうのです。
ではリモートワークの作業スペースで使う場合、どのくらいの部屋・範囲・広さで使用するべきなのでしょうか。
※筆者所有の「どこでもクーラー」はスポットクーラーの中でも非力な部類であり、本記事は非力なクーラーを前提にしています。
リモートワーク用の小部屋
リモートワーク用にパーテーションで空間を作ったり、納戸を仕事部屋にしたりと皆さん工夫されていますね。
収納スペースを仕事部屋に転用する場合、エアコンの設置が難しいことがあります。配管や電源引き込みの都合、極端に狭い部屋にエアコンを設置するときはオーバースペックな機種を選ぶことになるでしょう。
エアコンの設置が難しい小部屋では、スポットクーラーが活躍します。
筆者の仕事部屋は高台の南向き、遮るものがなく日当たり良好で夏場は36度まで室温が上昇します。スポットクーラーで太刀打ちできる生ぬるい暑さではありませんが、救いは1.5畳と極端に狭いこと。この部屋にスポットクーラーを導入し、どれくらい室温が下がるのか実験をしました。
11:30ごろの室温が29.1度。この時点でクーラーを作動させて経時変化を見たところ15分後に28.1度、30分後に27.5度、1時間後には27.1度まで室温が下がりました(排熱は排熱ダクトを通じて屋外に放出)。
1時間で室温が2度下がったことになります。
この後日差しが強くなったため室温は上昇しましたが、外的要因の影響を受けない部屋なら快適に過ごせるのではないでしょうか。
リビングの一角でも工夫次第で涼しく
広い部屋の一角で仕事をする場合、家族の視線を遮るためにパーテーションを設置している方もいます。冬場はいいのですが夏場はエアコンの風が届きにくく熱がこもりやすいのが欠点です。こうした小さなスペースにもスポットクーラーが重宝します。
スポットクーラーは扇風機とは異なり確実に「冷たい風」が出ます。日差しが当たらない小さなスペースであれば扇風機と比べ物にならない涼しさが得られるでしょう。
狭いスペースは気圧の低下に注意!
スポットクーラーはエアコンと同じ原理で空気を冷やしますが、1つ異なる点があります。それが給気場所です。エアコンは外気を取り込みますが、スポットクーラーは室内の空気を取り込みます。
排熱の分だけ室内の空気が減っていくため、室内の気圧は下がっていきます。これにより外気が部屋の中に侵入しやすくなり、結果「そんなに冷えない」と感じるのです。
特に狭い部屋は外気が少しでも流入すればあっという間に室温が上がるため、部屋への空気流入を妨げないようにしてください。
最近は屋外給気のスポットクーラーも販売されています。移動式ウィンドエアコンといったところでしょうか。これなら狭い部屋でも気圧の低下が起きず、効率的に空間を冷やすことができます。
使用環境によっては電気代にメリットあり
スポットクーラーはエアコンよりも電気代が安いといわれていますが、必ずしも正しくありません。スポットクーラーの機種やパワーによって消費電力が異なりますし、比較するエアコンが最新機種ならエアコンの方が安くあがる可能性もあるのです。
リモートワークで冷房による電気代増を抑えるには、消費電力が低いスポットクーラーを小さな部屋に設置するといいでしょう。
スポットクーラーの消費電力は高め
家庭用のスポットクーラーとしてNAKATOMIのMAC-20を挙げてみると、消費電力は770W、冷房能力は2.3kWとなっています。またアイリスオーヤマのIPA-2221Gの場合、消費電力は870W、冷房能力は2.2kWでした。
エアコンはどうでしょうか。三菱の霧ヶ峰Zシリーズ6畳用の消費電力は425W、冷房能力は2.2kWとなっています。同じく三菱のビーバーエアコンの2018年式を確認したところ、消費電力は400W、冷房能力は2.2kWです。
家庭用スポットクーラーと6畳用エアコンで冷房能力は同程度、消費電力はスポットクーラーのほうが高いことが分かります。
そもそもスポットクーラーは部屋全体を冷やすために作られていません。冷房能力が同じだからといって横並びで比較するのは難しいですね。
用途と範囲で使い分ければメリットも
6畳の部屋全体を冷やすならエアコンのほうが安く上がります。エアコンなら排熱のことを難しく考える必要もありません。
一方、エアコンの設置が難しい部屋や導入コストを下げたい場合、スポットクーラーが第一選択肢になるでしょう。しかし電気代に不安が……。
CORONA「どこでもクーラー」は消費電力225Wです。実はこの商品、「除湿」を主軸にしたものなので冷房能力の記載はありません。それでもリモートワーク用の狭いスペースなら十分冷えます。
つまり「消費電力が低いスポットクーラーで冷える狭い空間」ならスポットクーラーに軍配が上がるのです。
例えばNAKATOMIからはミニクーラー(MAC-10)が発売されています。消費電力は215W、冷房能力は0.43kWです。
狭い部屋にエアコンを設置するか悩んでいる方は、スポットクーラーで快適に過ごせる可能性があります。また広い部屋の一角に仕切りを設けて仕事をしている方は、部屋全体をエアコンで冷やすよりスポットクーラーを使った方が経済的でしょう。
スポットクーラーのお手入れ
CORONA「どこでもクーラー」の日常のお手入れは「排水タンクの水を捨てる」程度です。排水タンクではなくドレインホースで排水を外に流すタイプなら、水の処理は不要になります。
「どこでもクーラー」の排水タンクは結構大容量。5.8Lまで溜まったら運転が自動停止されますが、2〜3日に1回捨てていれば水捨てアラームすら鳴りません。またここまで溜めると捨てに行くのも一苦労。こまめに捨てたほうがいいですね。
タンク上の給気口にフィルターが付属していますが、加湿器のように神経質な手入れは必要ありません。ときどき屋外で叩いたり、掃除機でホコリを吸い取る程度です。
夏が終わったら排水タンクを屋外に出して完全に乾燥させ、翌年の夏を待ちます。排熱ダクトは屋外に向けているためゴミや虫などが侵入している可能性があります。しっかりふるい落としてください。
エアコンはお手入れをしないと冷房効率が下がりますし、エアコン清掃には時間も費用もかかります。その点スポットクーラーのお手入れは簡単です。筆者はベランダに排水をまき、打ち水効果を狙っています。
快適な室内環境で仕事の効率アップ!
暑さを我慢していると集中が持続せず、仕事の効率が落ちます。自宅で一人で仕事をしている場合、万が一体調が悪くなっても気付いてくれる人はいません。
すでにエアコンを設置している部屋ならぜひエアコンを使ってください。狭いスペースや冷房の使用頻度が低い部屋、短期間だけ冷房を動かしたい場合は初期コストが安いスポットクーラーが選択肢になるでしょう。
いずれにせよ健康第一です。快適な室内環境でリモートワークを充実させましょう!