データの消失や漏洩のリスクは、リモートワークだけでなくオフィスワークにもつきまといます。しかし接続ネットワークやデータ持ち出しに制限があるため、リモートワークよりもリスクは低いでしょう。
自由度が高いリモートワークにおけるデータ管理リスクについて、以下の記事でご紹介しました。
身近な場所に多くのデータ管理リスクがあります。ではそのリスクを回避するために、どういった対策を講じればいいのでしょうか。
- データ消失リスク
- データ漏洩リスク
- データ紛失リスク
この3つについて、具体的なリスク回避策を考えてみましょう。
データ消失リスクを回避!
データ管理における1つ目のリスクがデータの消失です。このリスクを回避するには、データの保存場所と保存方法がカギとなります。
これを機に、ご自身のデータ保存環境をぜひ見直してみてください。
機器の物理的破損を防ぐ
PCや外付けHDDなど衝撃に弱いストレージは「物理的な衝撃を与えない」ことが重要です。外に持ち出す機会が多いノートPCやタブレットは、衝撃吸収素材を使用したケースに入れて持ち歩きましょう。
持ち歩くカバンは手提げタイプよりリュックのほうが安心です。腕の振りによってカバンをどこかにぶつけたり、カバンごと落下させたりするリスクが低くなります。
また飲み物をこぼすことによる水濡れも避けたいですね。フタ付きのタンブラーや水筒なら万が一倒れても水がこぼれません。ノートPCならキーボードカバーをつけておくのも1つの方法です。
地震や水害のリスク低減策として挙げられるのは機器類を床置きしないこと、横置きできる機器を横置きにすることです。機器よりも高い位置に物を置かないようにすると、落下物による破損が避けられます。
雷のサージによるPC破損にも備えが必要です。雷サージに対応したOAタップを使っていない場合、雷が接近し始めたら外付け機器の接続を解除し、PCをシャットダウンします。
機器の電源コードも抜くべきですが、近場で落雷している状況なら電源には触れない方がいいでしょう。
雷サージ対応OAタップがサージを防げるのは1回まで。次のサージに備えて買い換える必要があります。
データ保存は重複・分散
災害や機器の寿命など注意していても予測が難しいリスクに対しては、データの重複保存や分散保存が有効です。ざっくりいうと「バックアップ」ですね。
バックアップを取るときは保存場所を分散させる必要があります。PCのデータを外付けHDDにバックアップしている方は、できればクラウドのバックアップに切り替えたほうがいいでしょう。
例えば雷のサージを受けた場合、あるいは水害で浸水した場合はPCと外付けHDDが一気に壊れるかもしれません。クラウドストレージは災害の影響を受けにくく、データが少なければ無料で使えますし定期的にバックアップするサービスもあります。
クラウドストレージの保存方法を理解しておく
データ管理の救世主ともいえるクラウドストレージ(オンラインストレージ)ですが、使い方を間違えるとデータが消えます。
- 自動同期・ミラーリング:変更をリアルタイムで双方向に反映
- バックアップ:保存時点の状態でデータを保存
データ消失のリスクに備え、クラウドにデータのバックアップを取りましょう。同期についてはクラウドストレージごとに設定が異なるため、システムを把握した上で利用するのがベストです。
PCでファイルを作成してクラウド同期をかけると、クラウドにも同じファイルが出現します。このファイルをクラウドで削除すると、PCのローカルファイルまで削除されてしまうことがあるのです。
大抵は削除から1ヶ月ほどクラウドのゴミ箱に保存されていますが、そうでない場合は機器の故障でデータが飛ぶ=クラウドのデータも消えることになります。
バックアップは定期的に取らなければ意味がありません。バックアップソフトやクラウドの自動バックアップサービスを利用しましょう。
データ断捨離には外部メモリを活用するのもアリ
PCのローカルストレージは容量が限られています。「ストレージがいっぱいです」というアラートが出るたびにデータの断捨離をする方も多いのではないでしょうか。
PCのゴミ箱に入れただけでは空き容量が増えず、ゴミ箱を空にしたが実は必要なデータが混ざっていた……。という絶望的な状況は回避したいですね。クラウドに退避させておくこともできますが、クラウド容量だって無限ではありません。
使わない可能性が高いデータはUSBメモリやSDカードに一時保存しておくのも選択肢です。自宅に余っている小型のストレージが絶望の淵から救ってくれるかもしれません!
データの漏洩リスクを低減!
データ管理における2つ目のリスクがデータ漏洩です。よくある漏洩に共通する根本原因を挙げてみましょう。
- ルールを守らない
- うっかりミス
- 意識の低さ 等
この3つに共通しているのは「注意の欠如」です。とはいえ誰にでもケアレスミスはありますし、一瞬の気の緩みを付け狙うようにしてトラブルが起こります。
「きちんとしてください!」の前に、可能な対策を講じましょう。
データ管理規定を遵守する
雇用型リモートワーカーの場合、社用PCの使用義務付けやデータ取り扱い規定の遵守によりセキュリティ対策を講じているのではないでしょうか。
フリーランスでは端末が貸与される案件に出くわすことがあります。普段と異なる端末で使いにくさを感じても、ルールはルールです。
データの流出が起きないように、起きても最小限の被害で済むように設けられた規定。これを軽視した結果データ漏洩が起きた……なんて目も当てられません!
フリーランスの場合、被害の規模によっては損害賠償請求につながるケースもあります。十分注意しましょう。
覗き見されない環境で仕事する
コワーキングスペースやカフェで仕事をする場合、背後からPCを覗かれる可能性があります。接近しなければ内容まで見えないだろうと安心してはいけません。離れた場所から一眼レフの望遠で覗かれるリスクだってあるのです。
「覗き見防止フィルム」を液晶に貼る、背後に壁がある席に座るといった対策を取りましょう。
家族がいる自宅でリモートワークを行っている場合も安心できません。というのも、家族がスマホで撮影した何気ない写真にあなたのPCが写り込んでいるかもしれないからです。それがSNSにアップされてしまったら……。
液晶もカメラも高画質化・高機能化の勢いが止まりません。故意の覗き見だけでなく写り込みにも十分注意しましょう。
家族にも伝えておきましょう!
メールによるデータ共有は宛先に注意
メールの宛先間違いはデータ漏洩につながります。メールは送信取り消しができないため、細心の注意が必要ですね。
メールアドレスは会社別にフォルダ分けしておくといいでしょう。社名→個人名で宛先が指定できるため、無関係の企業に送信してしまうリスクは低減できます。
またメール送信にBCCを使う場合、間違えてCCを使ってしまうと送信データだけでなく個人情報(メールアドレス)の漏洩にもつながります。
BCCは「会員登録をしている顧客」「名簿に登録している顧客」にメールマガジンやサービス案内などを一斉送信する際に使うため、単に個人情報というだけでなく「登録名簿の漏洩」です。
これを未然に防ぐ方法としてメールテンプレートの活用があります。
- TO:誤送信しても差し支えないアドレス(自分のサブアドレス等)を記入
- CC:誤送信しても差し支えないアドレス(自分のサブアドレス等)を記入
- BCC:空欄
これをテンプレート・下書きとして保存しておきましょう。TO・CCを使う場合はアドレスを削除するステップを挟むため、これがアラートとして機能します。
外部侵入を防ぐ
ネットワークに接続しているPCはウイルス感染のリスクを常に抱えています。可能なら有償のウィルス対策ソフトを、少なくとも無料ソフトをインストールしておきましょう。
ウィルス対策ソフトをインストールしていないと応募できないフリーランス案件もあります。企業では貸与端末以外で仕事をしない、あるいは指定のウイルス対策ソフトを必ず稼働させてください。
ウィルススキャンが始まるとPCの動きが遅くなることがあり、煩わしさからソフトを止めてしまう方がいます。やむを得ず止めた場合は、稼働再開をお忘れなく!
また自宅や職場以外の無料Wi-Fiを使う場合は、暗号化対策がなされたSSID(カギアイコンがついている)に接続してください。誰でも接続できるWi-Fiには情報漏洩のリスクがあります。
データ紛失リスクを低減!
データ管理における3つ目のリスクがデータの紛失です。紛失には「消えたか漏れたか戻ってくるか分からない」という不安がつきまといます。
それではデータ紛失を防ぐにはどういった対策を講じたらいいのでしょうか。
重要書類には目印を
会社から持ち出した書類は他の書類と紛れてしまわないように目印を付けておきましょう。
付箋でもいいですが、少し厚みがあるクリップなどがオススメです。他の書類に紛れ込んでも気付きやすくなります。
紙の書類はスキャン
持ち出した書類やクライアントから送られてきた書類を「失くさない」ことが第一ですが、万が一の紛失に備えて電子化(スキャン)しておくといいでしょう。
公私のエリアを分ける
今までプライベート空間だった自宅に仕事を持ち込んでリモートワークを行っています。PC内ではプライベートと仕事のデータをフォルダ分けしているはずですが、机の上や本棚はどうでしょうか。
仕事用のUSBメモリをプライベートの小物入れに仮置したり、手近にあったファイルに書類を挟んでしまったり。「とりあえず」「仮で」の行動はあっという間に忘れてしまうものです。
(そしてファイルごと廃棄し、重要な書類を失ってしまったのが筆者です!)
とはいえ、時間に追われる中で「とりあえず」は誰にでも発生します。仕事とプライベートの「とりあえず」は必ずエリアを分けましょう。仕事用のファイル1つ、仕事用の箱1つあれば混在は防げます。
家族がうっかり捨ててしまわないように置き場所にも気を付けましょう。
データ管理のリスクは低減できる!
私たちがリモートワークで扱うデータは膨大ですが、管理方法は非常にシンプル。リスク低減には長い時間も高い費用も必要ありません。
まずはリスクがある行動を知ること。次に自身の行動を振り返ること。
最後にリスク低減策を定め、実行すること。早速今日から始めてみましょう!