突然ですが、あなたは毎日よく眠れていますか? 眠りの質の良し悪しを何で判断していますか?
フリーランスの働き方は自由度が高い反面、「毎日決まった時間に○○」が苦手分野。そしてこれこそが睡眠の質を下げる要因かもしれません。
今回は健康的な生活を維持するために欠かせない要素のひとつ、「睡眠」について考えてみましょう。
睡眠の悩みが引き起こされる原因
眠れない
夜中に何度も目が覚める
疲れが取れない
布団からなかなか抜け出せない
仕事中眠くて集中できない
フリーランスは睡眠のトラブルを抱えやすい働き方だと筆者は考えています。
時間に縛られないこと、在宅で完結することはフリーランスのメリットですが、場合によっては睡眠の質を下げてしまうかもしれません。
- 時間の自由度が高い:起床と就寝の時間が定まらない
→生活リズムが崩れる - 出勤しない:太陽光を浴びる頻度が減る
→ホルモンの分泌サイクルが乱れる
まずは睡眠の悩みの原因と、フリーランスの働き方の関係を理解しておきましょう!
生活リズムの崩れ
「いつ働いていつ休んでもいい」「何時に起きて何時に寝てもいい」という働き方をしているフリーランスは、この自由度の高さゆえに生活リズムが乱れがちです。
たとえば会社員は働く時間が決まっていることが多く、自然と「朝起きて夜眠る」というリズムが整います。
しかしフリーランスは会社員のような定時がないので、このリズムそのものが崩れやすいのです。
ホルモン分泌サイクルの乱れ
睡眠の悩みを引き起こす原因のひとつが「ホルモン分泌サイクルの乱れ」です。
睡眠にはメラトニンというホルモンが関係しています。
脳から分泌されるホルモンの一種。覚醒と睡眠を切り替える役割を持ち「睡眠ホルモン」とも呼ばれる。
睡眠とメラトニン
朝起きて日光を浴びると、体内時計の針は「起床」の位置にリセットされます(図左)。
リセットを感知した脳はメラトニンの分泌をストップ。これによって身体は活動モードへ切り替わります。
体内時計がリセットされてから一定時間が経過すると、脳は再びメラトニン分泌を開始(図中)。
メラトニンが増えると体温や血圧が徐々に下がり、人は眠気を感じるようになります(図右)。
リモートワークが主流のフリーランスは、1日中外へ出ないことも多々あるでしょう。
太陽の光を浴びずに1日中家の中で過ごすと、体内時計がうまくリセットできません。
また夜遅くまで明るい場所で仕事をすることも、メラトニンの分泌サイクルを乱します。
これによって寝つきが悪くなり、生活リズムの乱れにも繋がるのです。
なぜ睡眠は大事?眠れない・眠らないことのリスク
睡眠不足が続いてもその影響がすぐに出るとは限らないため、睡眠の大切さは見過ごされがちです。
そもそも、睡眠はなぜ重要なのでしょうか。
睡眠不足によって生じるリスクを確認しましょう。
免疫力の低下
睡眠不足によって病気に罹患しやすくなるのは大きなリスクです。
睡眠は私たちの体や脳を休めるだけでなく、体内の免疫システムを休ませる貴重な時間。
しかし睡眠が不足すると免疫系は休息が取れず、細胞を修復・活性化させられないことに加え免疫細胞そのものが減少してしまいます。
これによって免疫力が低下し、感染症をはじめとする疾患のリスクが高まるのです。
ちょっとしたことで風邪を引きやすくなった……と感じたら、睡眠不足も疑ってみてくださいね。
内臓の働きが鈍くなる
睡眠不足に陥ると内臓の働きが鈍くなります。
睡眠不足によって免疫力が低下すること加え、消化器系の活動が弱まること、新陳代謝が鈍ることなどが原因です。
これらによって慢性的な胃もたれや吐き気、便秘や下痢などの不調につながります。
また食欲をコントロールするホルモンの働きも悪化するため肥満になりやすい状態です。当然病気のリスクが高まります。
さらに生活リズムが崩れると暴飲暴食や過度な飲酒につながり、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こすこともわかっています。
認知機能・記憶力の低下
睡眠不足によって認知機能や記憶力も低下するといわれています。
よく眠れなかった次の日、頭がぼーっとした経験はありませんか? 簡単な計算を間違えたり、漢字が思い出せなかったりしたことは?
計算や言語・理解・判断能力など、数値で評価できる能力。
脳がきちんと休息を取らないと、認知機能が低下します。
また人は睡眠中に日中の活動内容を整理し、記憶として定着させています。
睡眠が不足するとこの活動に悪影響を及ぼし、記憶力の低下にもつながるのです。
仕事のパフォーマンス低下
認知機能の低下によって、仕事のパフォーマンスが低下します。
- 判断力が鈍る
- 忘れっぽくなる
- 単純なミスが増える
普段なら意識しなくてもミスなくできることも、睡眠が不足しているときは失敗しやすくなります。
メンタル不調
睡眠不足は体や脳だけでなく、私たちのメンタルにも悪影響を及ぼします。
よく眠れなかった翌日、いつもより近所の物音が気になったり、家族の何気ない発言に苛立ったりした経験はありませんか?
睡眠が足りていない人は、睡眠を十分とっている人と比べてイライラしたり、不安を感じたりしやすいといわれています。
これはコルチゾールというホルモンの分泌量が原因で起こります。
副腎皮質から分泌されるホルモンの一種。ストレスを感じたときに一気に分泌される「ストレスホルモン」。
コルチゾールは睡眠中(特に起床前後)にたくさん分泌され、日中襲ってくる数々のストレスから私たちを守ってくれます。
しかし睡眠が乱れるとコルチゾールの分泌量が安定しません。その結果、日中のストレス耐性が低下していきます。
ひどいときには精神疾患に似た症状が出ることもあります。
良い睡眠をとるためのポイント
これらのリスクを回避するためには、何よりも「質が高い睡眠をとること」が重要です。
「質が高い睡眠」という言葉に聞き覚えがある人は多いでしょうが、「質が高い」とはどんな睡眠を指すのでしょうか。
- 〇時間寝ましょう!
- ×時までに寝て△時までに起きましょう!
実は、こうしたルールを作って守るだけでは、質の高い睡眠に繋がりません。
睡眠の質を評価する指標はいくつもありますが、何よりも大切なのは自分にとって適切な睡眠がとれているかどうか、です。
質が高い睡眠のチェックポイント
睡眠は、長くとれば良いというものでもありません。自分にとって適切な睡眠がとれているか否かは、以下のようなポイントで判断します。
- 夜中に何度も覚醒せず、朝までぐっすり眠れているか
- すっきりと目覚めて意欲的に活動できているか
- 夜はスムーズに眠りにつけるか
3つを満たす状態が長く続けば、毎日を生き生きと過ごせているはず! 皆さんの睡眠状況はいかがでしょうか。
最初のノンレム睡眠の深さがポイント
睡眠には、眠りが浅い「レム睡眠」と眠りが深い「ノンレム睡眠」があり、私たちは睡眠中におおよそ3〜5回ほど、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しています。
- レム睡眠:浅い眠り・体は休んで脳は働いている
- ノンレム睡眠:深い眠り・体も脳も休んでいる
睡眠時間の前半にノンレム睡眠(深い眠り)、後半にレム睡眠(浅い眠り)が多くなるのが一般的です。
ノンレム睡眠の深さにはいくつかの段階があり、深ければ深いほど疲労回復が望めます。
心身ともに十分な休息をとるためには、前半のノンレム睡眠をしっかり確保することが重要なのです。
寝る前のNG行動
ものすごく疲れているのになぜか寝付けない。
夜中に何度も目が覚める。
上記にピンときた方は、寝る前についつい↓↓こんな↓↓ことをしていませんか? 質が高い睡眠をとるために、避けるべき行動も知っておきましょう。
- 寝る直前までスマホやパソコンの画面を見ている
- カフェインやアルコールを摂取する・喫煙する
- 激しい運動をする
寝る直前までスマホやパソコンの画面を見ている
ベッドでスマホをいじっているうちに寝落ちする毎日……。そんな方は要注意です!
スマホやパソコンなどの電子機器が発するブルーライトという光は、紫外線に次いで大きなエネルギーを持っているといわれています。
その強い光を浴び続けると、脳が「まだ明るい=日中だ」と勘違いしてしまうのです。
寝る前にベッドでスマホをいじっていると覚醒して寝付けなくなる原因は、ここにあります。
カフェインやアルコールを摂取する・喫煙する
日中の眠気覚ましにカフェインを摂取する人は多いですが、就寝前はNG!
カフェインはノンレム睡眠への移行を阻害します。
またアルコールも含め、利尿作用がある飲み物の摂取は睡眠を妨げる原因になります。
同じ理由で喫煙も寝つきを悪くしたり、中途覚醒の原因になったりします。
激しい運動をする
体を動かして疲れた方がぐっすり眠れるから……と寝る前にランニングしたり、ハードな筋トレをしたり……。
これも、NGです!
人は、体温が下がってくると眠気を感じます。
しかし激しい運動をすると体温が上がり、まだ活動時間だ! と誤認識してしまいます。
それによって寝つきが悪くなってしまうのです。
良い睡眠をとる方法
質が高い睡眠の特徴や寝る前のNG行動がわかったら、次は「どう眠るか」です。
- 寝室の環境を整える
- 光を使いこなす
- 食事に気を遣う
- リラックスする
- 入眠儀式をつくる
実際に良い睡眠をとるためのコツをご紹介します。
寝室の環境を整える
まずは、快適に眠れる環境を整えましょう。ポイントは次の3点です。
- 温度・湿度
- 寝具
- 音
ご自身の睡眠環境と見比べてみてくださいね!
①温度・湿度
- 室温:16〜27度程度(季節による)
- 湿度:50%前後(通年)
室温は季節によって調整しましょう。たとえば夏は26度程度が快適ですが、冷房が苦手な人は28度前後にすると心地よいですね。
これ以上温度が上がると熱中症のリスクが高まるので注意が必要です。
冬場は20度前後に保つのが快適だとされていますが、人によって適温が異なるので16~22度程度を目安に調整すると良いでしょう。
湿度は1年を通じて50%前後に保つのがおすすめです。
冬は布団の中だけを温かくし、暖房をつけずに寝ることも多いかもしれません。
しかし布団の内部温度と室温の差が大きすぎると、ヒートショックが起こりやすくなります。室温が下がりすぎないよう注意が必要です。
②寝具
- 敷布団・マットレス:適度な硬さ
- 掛布団:吸湿性が高く軽いもの
- 枕:自分に合う高さ
敷布団やマットレスは柔らかすぎず、適度な硬さがあるものを選びましょう。
柔らかすぎると身体が沈んで寝返りしにくくなってしまいますし、硬すぎても身体の一部分だけに負担がかかって腰痛などの原因になってしまいます。
掛布団は吸湿性が高く、内部が蒸れないものがおすすめです。
また、重い掛布団を使うと身体に負担がかかり血流を妨げることもあるので、軽いものを選んでくださいね。
枕は快眠に欠かせないアイテム! 眠りの質を左右するため、オーダーメイドの枕がよく売れているのだとか……。
自分に合わない枕を使うと、肩こりやいびきの原因になってしまいます。
仰向けに寝たとき、頭から背中にかけて自然なS字カーブを描いている状態が理想です。この理想の姿勢をキープできる高さの枕を選びましょう。
③音
- 厚手のカーテンで遮音
- 耳栓で防音
- 音楽はスリープ設定
良い睡眠をとるには無音の状態が望ましいとされています。たとえばカーテンを厚手のカーテンに変えるだけでも、騒音を少し軽減することができます。
それでも防ぎきれない場合は、耳栓をつけるのもおすすめです。
音楽を聴きながら眠りにつきたい人もいるでしょうが、一晩中流しっぱなしはおすすめできません。
スリープ機能などを使って、眠っている間は音楽が止まるようにしましょう。
光を使いこなす
前半部分でお伝えしたとおり、「光」は私たちの生活リズムを整えるうえで重要な要素です。
寝る直前まで明るい部屋にいると、メラトニンの分泌に悪影響を及ぼします。メインの照明を消して間接照明に切り替えるなど、活動時間帯よりも少し暗くして過ごしましょう。
ただし蛍光灯のような白色光は脳を覚醒させて寝つきを悪くするので、オレンジ系の暖色の明かりがおすすめです。
そして朝起きたら、太陽の光をたくさん浴びてください。寝室に遮光カーテンを使えば明暗のメリハリがつき、体内時計のリセットにも役立ちます。
食事に気を遣う
- 朝食:トリプトファン・ビタミンB6を意識的に摂取
- 夕食:就寝3時間前までに完了
- どうしても…の夜食:消化しやすいもの
朝食でトリプトファンとビタミンB6を摂取すると、メラトニンの生成に役立ちます。
トリプトファンは大豆製品や乳製品、ビタミンB6は魚類に多く含まれているため、朝食を焼き魚やみそ汁などの和食メニューにすると簡単に摂取できます。
夕食は、就寝の3時間前までに済ませましょう。
食後は食べたものを消化するために内臓が活発に動いています。この状態ではなかなか寝つけません。
仮にうまく寝ついたとしても深い眠りに入れず、夜中に覚醒してしまうかもしれません。
そのため消化器系の活動が落ち着いてから眠れるよう、夕食の時間をコントロールすることが重要です。
とくに脂肪や油分を多く含む食事は消化に時間がかかるので、早めに済ませておきましょう。
どうしても夜眠る前にお腹が空いてしまったら、おかゆやうどん・スープなど消化が良いものを選ぶのがおすすめです。
リラックスする
体温を上げるような激しい運動はNGですが、リラックス効果がある運動はむしろ効果的です。具体的には以下のような運動が良いでしょう。
- ストレッチ
- ドローイン(インナーマッスルを強化する運動)
また白湯やノンカフェインのハーブティーなど、温かい飲み物を飲むのも効果的です。
ただし就寝直前に飲んだり、温度が高すぎる状態で飲んだりすると、体温が上がって寝つきが悪くなるので注意してください。
入眠儀式をつくる
活動時間と睡眠時間のメリハリをつけることも大切です。
- パジャマに着替える
- アロマを焚く
- 読書する
- 音楽を聴く など
毎日決まった行動をとることで身体が「こうなったら眠る時間だ」と記憶し、入眠がスムーズになります。
フリーランスこそ規則正しい生活を
睡眠不足は心身の不調を引き起こすだけでなく、仕事にも大きく影響します。結果主義のフリーランスにとって、パフォーマンスの低下は致命的です。
仕事できちんと成果を出すためにも、睡眠時間は削るのではなく、むしろ意識的に確保していきましょう!