テレワークでは、先輩の仕事ぶりを見て覚えることができません。
つまり後輩育成のためには、これまでと異なるアプローチをしなければならないということ。
今回はテレワークという環境に適した後輩育成のヒントをご紹介します。
テレワークで感じる育成の難しさ、原因は?
2020年にパーソル総合研究所が実施した調査によると、新入社員の半数近くが在宅勤務における「コミュニケーションのとりづらさ」を感じていることがわかります。
画像出典: パーソル総合研究所/2020年度新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)
コミュニケーションのとりづらさは、社員同士の信頼構築をも妨げています。
関係性の構築は後輩育成の第一歩。コミュニケーション不足の解消が、スムーズな後輩育成にも繋がるといえるでしょう。
テレワークでコミュニケーション不足を解消する方法
とはいえ、テレワークでは信頼関係を築きづらいのも事実。
その環境下で後輩とのコミュニケーション不足を解消するには、出社時に何気なく実施できていたことを意識的に取り入れる必要があります。
何事も言語化する
先輩社員の働きぶりが見えないテレワークでは、育成する側が仕事内容を詳細に言語化する必要があります。
例えば取引先との打ち合わせがあったとしましょう。
一緒に参加すれば、後輩は先輩の立ち振る舞いを見て学ぶことができますし、帰社途中に開く簡易的な反省会で「あのときの発言の意図は~」などと説明してもらうこともできます。
しかしテレワークでは、こうした視覚情報が得にくいだけでなく、簡易的な反省会開催のハードルも上がります。
だからこそ改めて言語化して説明することで、後輩の理解を助ける必要があるのです。
また言語化が役立つのは、他社との打ち合わせシーンだけではありません。日々の業務においても大いに役立ちます。
相手の姿が見える環境であれば、ときに「察する」「雰囲気から感じ取る」といった具合で空気を読むよう求めることができました。
しかしテレワークにおいて、こういった考えは危険。すれ違いを防ぐために、何事も細かに言語化する癖をつけておくことが重要です。
もしかすると後輩にとっては、そもそも言語化のハードルが高いかもしれません。
しかし自分自身の考えを言葉にするスキルは、いつか思いがけない場面で役立つこともあります。これもひとつのトレーニングとして取り組んでもらうといいでしょう。
雑談でハードルを下げる
始業前や休憩中、飲み会などで気軽にできていた仕事以外の雑談も、テレワークへの移行でその機会が減りました。
また業務中も同様で、出社していれば相手が忙しいかどうか見た目で判断できるので、後輩社員からでも話しかけやすい環境が整っていたといえます。
しかしテレワークでは相手の様子が見えないため、後輩からの連絡ハードルがぐんと高くなります。
いま連絡して迷惑にならないだろうか、忙しいのではないだろうかと想像を巡らせすぎて、結果的に後輩社員の相談意欲が削がれかねないという状況。
だからこそ先輩社員からの積極的なアプローチが必要です。
プライベートな話、個人的な悩みなどのプライベートな話題が、先輩社員と後輩社員の関係構築に役立ちます。
テレワークにおいては、自分が相手にとって「気軽に相談できる人」「話しかけるハードルの低い人」であると認めてもらうこと、そして「雑談しやすい空気」「話しかけやすい雰囲気」を作ることが、信頼関係構築の第一歩になるのです。
・気軽に相談できる人
・話しかけるハードルの低い人
・雑談しやすい空気
・話かけやすい雰囲気
「1対1」と「チーム」の使い分けがポイント
日々のコミュニケーション機会を増やすことは重要ですが、その増やし方にもコツがあります。
個人とチームを上手に使い分けることで、より効果的にコミュニケーションを取ることができるでしょう。
定期ミーティングの開催
テレワークにおいては、定期的なミーティングの開催が非常に重要です。
これは短いもので構いません。毎日必ず顔を合わせ、対話する時間を確保するということ自体に意味があります。
またこれに加え、週に数回は長めに時間を取って仕事のことをじっくり話せる機会を設けることも効果的でしょう。
このような定期ミーティングは、テレワークで見えにくくなった後輩の不調に気付くきっかけにもなり得ます。
- ミーティング中の発言が減る
- 問いかけに対しての反応が鈍くなる
こういった様子が見られる場合、仕事に対する意欲が低下している可能性があります。
これらに加えて、以下のような兆候が見られる場合も何かしらの悩みを抱えている可能性があるので要注意!
- ミーティングやタスクのスケジュール管理が甘い
- 日々の報告や相談が減っている
定期ミーティングの実施により、これらのサインを取りこぼすことなく拾ってフォローに回ることが重要です。
チーム育成で後輩も先輩も負担軽減
1対1での対話は後輩育成において非常に有効ですが、これにこだわりすぎると危険です。
というのも1対1の関係だけでは、相手との相性が悪かったときに後輩社員がストレスを抱え込む事態になりかねないから。
また後輩の些細な悩みや不安を先輩側が見逃してしまった場合、それを解消する術がないまま後輩社員が不満を抱え続けてしまう可能性もあります。
これを防ぐためには、1人ではなくチーム全体で育成をおこなうことが重要です。
1人では見逃してしまいかねない不調のサインも、チームでフォローできる体制が整っていれば見逃すリスクを下げることができます。
このようなチームでの育成は、後輩社員だけでなく育成する側の負担軽減にも繋がるのでおすすめです。
テレワークで重要な「距離感」
ここまでの内容を振り返ると、テレワークでの後輩育成には丁寧なフォローが重要だとわかります。
しかし丁寧なフォローも、やり過ぎはNG! 過度の干渉は、ときに後輩の成長を妨げる要因に……。
ポイントは程よい距離感を保ち、自立を促すことです。
干渉し過ぎはNG!
あなたの周りに、何かを頼むと1から10まで事細かに質問をしてくる後輩はいないでしょうか?
周囲の仕事ぶりが見えにくいテレワークだからという理由もありますが、それ以上に若手社員の「失敗を恐れる気持ち」が強いことが理由だと考えられます。
つまり上司にたくさん質問をしたり、やり方を詳しく聞いたりするのは、確実な方法で失敗しないように進めたいと考えているから。
この心がけは悪いことではありません。先輩に、会社に、迷惑をかけまいとする後輩なりの判断なのでしょう。
ただし先輩側は質問の回答ばかりに時間が取られて仕事が進みませんし、後輩社員も成長しません。
こんなときこそ、後輩の自立を促すことが重要!
タスクを与えるときは、最終ゴールだけを共有しましょう。
目指すべき場所がずれないようにきちんとすり合わせた上で、そこまでの道のりは自分自身で考えさせます。
もしかしたら後輩社員から質問されるかもしれませんが、具体的なやり方を手取り足取り教えるのではなく、考え方のヒントを与える程度にとどめるのがポイント。
こうすることで後輩自身が自分の頭で考えられるようになり、少しずつ「質問攻め」の状態を解消できるでしょう。
評価すべきは「過程」
後輩社員は「結果を出すことで評価される」と考えます。
もちろんこれは間違いではないのですが、最初からこれを求めると先述した通り「失敗しないで成果を出したい」と考える部下ばかりが増えてしまいます。
だからこそ最初のうちは、共有したゴールに対してどのような行動を取ったか、そしてどのような挑戦をしたか、という過程の部分もしっかり評価をしてあげてください。
自分が出した結果から次はどう行動したらいいか考え、それをまた試す。この繰り返しで後輩社員は成長していきます。
このように育成する側が横でフォローしながら一緒に走っていくことで、信頼関係の構築にも繋がるでしょう。
後輩との併走は手取り足取りの指導よりも気を遣います。しかし後輩の成長スピードは速いですよ!
テレワークでも育成を諦めないで!
働き方の変化によってこれまでと異なる悩みが生じたり、いままでのようなアプローチが通用しなくなったりと、後輩育成において新たな問題に直面している人も多いでしょう。
ただし、そこまで難しく考える必要はありません。コツさえ掴めば、たとえ育成経験の少ない若手社員でも後輩を育てることができます。
テレワークだから育成できない……と諦めず、できる方法から取り入れてみてください!