REMO-zineではこれまで、フリーランスが仕事に集中して取り組むためのコツを様々な観点から紹介してきました。
今回は新たに、「ディープワーク」という仕事への取り組み方をご紹介します。
ディープワークはすべての人に効果があるものではなく、合わない人・向いていない人もいます。
また誰もがすぐにできるようになるものでもありません。手順どおりに取り組んだとしても、慣れるまでには時間がかかるでしょう。
今回ご紹介する内容を参考に、ぜひご自身とディープワークの相性を見極めてください。
ディープワークとは
ディープワークとは、『Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World(大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法)』を執筆したカル・ニューポート氏が作った言葉です。
著書の中では以下のような状態で仕事に取り組むことだと定義されています。
- 注意が散漫せず、集中した状態
- 脳がフル稼働して思考能力や認知能力が高まっている状態
時間が経つのを忘れたり、周囲の音が聞こえなくなったり、ときには空腹や眠気さえ感じなくなったりするほど何かに没頭した経験はありませんか?
これは「フロー」と呼ばれ、「外からの刺激にも気がつかないほど集中している状態」を指します。
ディープワークも似たような状況で、これを「自分が好きなこと」「夢中になれること」ではなく「仕事」で実践します。
※反対に、集中できずに取り組める仕事・考えずにできる仕事をシャローワークと呼びます。
ディープワークの効果
ディープワークは結果主義のフリーランスと好相性!
ディープワークには、アウトプットの質を高めたり、仕事の質自体を高めたりする効果があるとされています。
また高いパフォーマンスを発揮できるようになるため、同じ仕事がこれまでよりも短い時間で完了します。
これによって時間的な余裕が生まれ、ほかのことに活用できる時間が増えるのです。
働いた時間の長さではなく、出した結果で評価を受けるフリーランスにとって、仕事の効率アップは非常に大きなメリットですね。
ディープワークの向き・不向き
働いている場所・環境から判断すると、会社員と比べてフリーランスの方がディープワークに取り組みやすいといえます。
そうはいっても、すべてのフリーランスがディープワークに適応できるわけではありません。
ライフスタイルや担当している業務内容などによって、向き・不向きがあります。
- ○:1人でいることを好む人
- ×:同時に複数のタスクを進めなければならない人
- ×:仕事が生活の一部になっている人
- ×:即レスが求められる仕事をしている人
○:向いている/×:向いていない
◯:1人でいることを好む人
高い集中力を持って仕事と向き合うディープワークでは、ひとり黙々と作業することが求められます。
- ×:複数人で会話をしながら作業したい
- ×:カフェなどガヤガヤした環境で作業したい
- ○:誰とも話さずひとりきりで作業に没頭できる
- ○:誰もいない静かな空間で作業に没頭できる
「○」に一致する人がディープワーク向きだといえます。
×:同時に複数のタスクを進めなければならない人
マルチタスクをこなしている人・こなさなければならない人に、ディープワークは不向きです。
ディープワークでは、常に1つだけのタスクと向き合わなければなりません。
Aの作業をしながらその合間にBの作業をする……など、常に複数タスクを行き来するような働き方をしていると、ディープワークは難しいでしょう。
×:仕事が生活の一部になっている人
ディープワークは、家事や育児などの隙間時間に仕事を進めている人とも相性が良くありません。
先述したマルチタスクと似ていますが、隙間時間に仕事を進めると家事・育児のこと、次の予定など考えることが常に複数ある状態です。
また予期せぬスケジュール変更にも対応しなければなりません。
たとえば筆者は子どもの昼寝中に仕事を進めていますが、作業ができるのは「子どもが寝ている間だけ」です。
それが30分なのか2時間なのかは、事前にわかりません。
また仕事中は常に「子どもが起きていないか」「泣いていないか」が気になりますし、すぐ気付けるように……と気を張ってしまいます。
このように、仕事だけに集中するのが難しい場合はディープワークが厳しいですね。
×:即レスが求められる仕事をしている人
業務で即レス(またはそれに近い状態)を求められている場合、ディープワークは不向きです。
筆者がマネージャーをしていた頃は、チャットでのやり取りが1日の業務の大半を占めていました。
連絡の滞りが仕事の遅延に直結することもあり、こまめなチャットのチェックは欠かせません。
先述した「マルチタスク」と似ていますが、チャットと他の業務を常に行き来している状態だったため、ディープワークには向かない働き方でした。
ディープワークの実践方法
ディープワークは「意識的に集中して1つのタスクをこなすこと」ではありません。
高い集中力を無意識下で発揮するため、そして仕事のパフォーマンスを上げるために押さえておきたいポイントがあります。
- タスクの細分化
- 1週間分のスケジュール策定
- タスクに向き合う環境作り
- オンオフ・メリハリを付ける
フリーランスのための基本的なディープワークの実践方法を、4つのポイントに分けてご紹介します。
タスクを細分化する
まずは準備として、抱えているタスクを細かく分ける必要があります。
ここでは例として、おにぎり職人の仕事で考えてみましょう。
クライアントから「3種類のおにぎりを作る」という依頼が入ったとしましょう。大きなタスクは以下のとおりです。
- ツナマヨおにぎりを作る
- 昆布おにぎりを作る
- おかかおにぎりを作る
ディープワークをする場合、このタスクは規模が大きすぎます! これを細分化していくのがポイントです。
タスク1「ツナマヨおにぎりを作る」を細分化
- お米を研ぐ
- ご飯を炊く
- ツナとマヨネーズを混ぜる
- ご飯でツナマヨを包む
- 軽く握って形を整える
- 海苔を巻く
1つの大規模タスクから、新たに6つの小さなタスクが見つかりました。ディープワークをするうえで、このような細かなタスク分けが欠かせません。
1週間分のスケジュールを立てておく
「取り組むタスク」を決める時間を省くために、1週間分のスケジュールを立てます。
いざ仕事を始めようとしたとき、「今日はどの作業から始めようか」「何から手をつけたらいいだろうか」と迷ったことはありませんか?
抱えている仕事が多すぎて優先度に迷ったり、仕事の前に仕事の整理が必要だったりすることがしばしばあります。
1週間分のスケジュールを前もって決めておけば、朝カレンダーや手帳を見て「今日取り組むタスク」を確認するだけで、すぐに仕事が開始できます。
迷う時間をなくし、効率的に仕事を進めるための準備が「1週間のスケジューリング」なのです。
タスクに集中する
複数のタスクを同時進行せず、1つのタスクだけに集中して取り組みます。そのためには集中力を削ぐ要因を排除しなければなりません。
①オフライン環境に身を置く
まずは仕事に集中するための環境を整えます。仕事中何となくスマホに手を伸ばし、何となく通知を確認し、何となくアプリを開くことはありませんか?
- ニュースサイトをチラッと見たら30分経過
- 新着チャットに返信したら秒で返信が来て長引いた
ディープワークにおいて、内的・外的要因問わずこうした寄り道を一切排除することが重要です。
しかし人間は誘惑に弱い生き物ですから「余計なものは見ない! チャットもメールも返信しない!」と意識するだけではうまくいきません。
仕事の手が止まってしまう要因と、それを完全に断ち切る方法を考えましょう。
- ニュースアプリを見てしまう
→スマートフォンの電源を切る - 通知がくるとチャットアプリを開いてしまう
→チャットの通知をオフにする
インターネット接続が必要ない作業なら完全にオフラインにするのも有効。PCを使わない場合は電源を切るといいですね。
また、誰かと話しながら仕事するのもNG! ひとりで黙々とタスクに向き合うのがディープワークです。
②メールやチャットのチェックはしない
チャットやメールの通知が届くとどうしても内容が気になりますが、タスクに集中している間はメールやチャットの返信をしてはいけません。
通知をオフにできればする、できなくても反応しないことが大切です。
筆者の事例
- 資料作成中
- チャットの通知が届く
- すぐ確認する
- 目に入った別のチャットも確認する
- 確認している間に届いたチャットにも目を通す
- さて、何をやっていたんだっけ……
「今通知が届いたチャットを確認する」ことが目的だったのに、ついつい目的以外の行動にたくさんの時間を費やしてしまったことがあります。
実はこの行動こそがディープワークの妨げになっていたのです。
資料作成からチャット確認へ移行した瞬間、集中力は途切れます。もっといえば、チャットの通知に気付いた瞬間、集中力が切れています。
このようにタスクの切り替えを頻繁に行うほど、仕事のパフォーマンスは低下してしまうのです。
メールやチャットのチェックは大切な「仕事」ですが、ディープワークを実践したいなら我慢しましょう。そのためにも、先ほど紹介したとおり「通知を切る」ことが重要です。
仕事を終えたら何も見ない
仕事に対して高い集中力を注ぎ込むためには、仕事とそれ以外を明確に区切る必要があります。
仕事が終わったら、仕事に関連するものには一切触れてはいけません。
仕事が終わっても仕事のことを考えてしまう……のは仕方ありません。しかしキッカケを減らすためにも、仕事に関連するコト・モノとは物理的に距離を置きましょう!
- メールやチャットをチェックしない
- 仕事に関連することを調べない
- 仕事に使うツールは全て片付ける
仕事とプライベートの線引きが難しいフリーランスは、意識的に「今日の仕事は終わり」だと脳に認識させ、メリハリをつけることが重要です。
ディープワークの取り入れ方
これまでの内容から、ディープワークは難しそうと感じる人は多いのではないでしょうか。
たしかに、高い集中力を維持しながら仕事を続けるのは簡単なことではありません。
しかしディープワークは「すべての仕事に対して高い集中力で取り組み続けなければならない」ものではなく、基本的な実践方法さえ守れば好きな形にアレンジして取り入れてもいいんです。
自分の仕事のスタイルに合う方法を見つけてみてください。
習慣化する
ルーチンを作ることで、意識せずともディープワークに入れるようになります。
- 洋服を着替える
- ヘアセットやメイクをする
- 作業デスクでコーヒーを飲む
重要なのは「その行動を取れば自然とディープワークを開始できるまで習慣化すること」です。
脳と身体に覚えさせるまで少し時間はかかりますが、定着すればスムーズに仕事が始められるようになります。
シャローワークを挟んでバランスを取る
何も考えずにできる仕事・単純作業などを間に挟む方法です。
1日の中でディープワークとシャローワークを組み合わせるほか、「週3日はディープワーク、残りの2日はシャローワーク」など1週間単位で組み合わせることもできます。
またシャローワークの時間は、たとえば誰かと話したり、好きな音楽を聴いたりしても問題ありません。
作業にメリハリがつくため、息切れせずにディープワークを続けられるというメリットもあります。
簡単ではない!だからこそ効果抜群!
ディープワークは誰でも簡単にできるものではありません。できるようになるまで時間がかかりますし、そもそも人によって向き不向きがあるのも事実です。
もしディープワークとの相性が良さそうだと感じたら、ぜひ一度試してみてください。
うまく使いこなせれば集中力アップ・仕事効率アップなど、フリーランスにうれしい効果が期待できますよ!