2023年10月1日より導入されるインボイス制度。
最近耳にすることが増えてきましたが、これによって一体何が変わるのでしょうか。
実はフリーランスにも大きな影響があるインボイス制度を、2回にわけて詳しく解説します。
第2回はコチラ!
インボイスの前に消費税・納税を理解しよう
インボイス制度は、消費税に関連した制度です。
まずは制度の大前提となる消費税と、その納税方法について理解しておきましょう!
消費税は「払う」のではなく「預ける」もの!?
モノやサービスを購入したときにかかる消費税。
日本の税率は2022年7月現在、以下となっています。
- 標準税率:10%
- 軽減税率:8%
①飲食料品(ただし酒類・外食は除く)
②定期購読契約の新聞
このように、購入する商品によって適用される税率が異なります。
たとえば筆者がペンを1本買ったとしましょう。
ペンには標準税率10%が適用されるため、100円のペンを買うと10円の消費税がかかります。
- ペンの代金:100円
- 消費税:100円×0.1(10%)=10円
→→100円+10円=110円(税込)
税金は本来、税務署に納めるもの。しかし私たち消費者は商品代金と消費税をあわせてお店=事業者に支払います。
消費税10円を事業者に支払うことが「納税」になるのでしょうか。実はそうではありません。
ペンを販売している事業者へ一旦預けただけなのです。
事業者は、1年間で預かった消費税をまとめて国へ納税する仕組みになっています。
課税事業者と免税事業者
全ての事業者が国に消費税を納めているわけではありません。
納税義務がある課税事業者と、その義務がない免税事業者が存在します。
以下のどちらかを満たすと、課税事業者として消費税の納税が必要です。
課税対象の年、または事業年度を基準として
- 個人事業主は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が1,000万円超
- 個人事業主は前年の1月1日〜6月30日、法人は前事業年度の上半期の課税売上高が1,000万円超
逆にいうと、売上高が1,000万円以下であれば免税事業者に該当します。
免税事業者は手続きをすれば課税事業者になることは可能!
インボイス制度とは?
正式には「適格請求書等保存方式」といいます。
国税庁のホームページでは、このように説明されています。
インボイス制度とは、
引用元:インボイス制度の概要|国税庁
<売手側>
売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。
ざっくりまとめると、以下の2点に集約できます。
- 商品を売る人
商品を買う人から依頼されたらインボイスを発行しなければならない。 - 商品を買う人
控除を受けるためには発行されたインボイスを保管しなければならない。
ところで、「インボイスを発行」とは一体何を、どう発行することなのでしょうか。
もう少し詳しくみていきましょう!
そもそもインボイスって何?
インボイス(invoice)とは、適格請求書のことです。さらに噛み砕いてみました。
適用税率や税額、その他の定められた事項(下記)の記載が義務付けられている書類。
- 書類を発行する事業者の氏名/名称、および登録番号※
※登録番号については後述 - 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとの取引額(合計)と適用税率
- 税率ごとの消費税額
- 書類の交付を受ける事業者の氏名/名称
インボイスを発行できるのはどんな人?
インボイスは、誰でも発行できるわけではありません。
- 課税事業者であること
- 適格請求書発行事業者としての登録を済ませていること
この2つを満たした事業者だけがインボイスを発行することができます。
なおインボイスに記載しなければならない登録番号は、適格請求書発行事業者としての登録を済ませることで付与されます。
いままでと何が変わるの?
軽減税率制度が導入された2019年10月1日以降、請求書にはそれぞれの税率ごとに取引額を記載することが義務付けられています。
インボイス制度ではこれに加えて、以下2点の記載が必須となりました。
- 税率ごとの消費税額
- 登録番号
つまり、請求書に記載しなければならない項目がいまより増える、ということです。
インボイス導入の目的と解消する2つの問題
やることが増えてちょっと面倒な印象が強いインボイス制度ですが、なぜこの制度が必要なのでしょうか。
これには、「現在の複数税率」と「納税の仕組み」が関係しています。
目的1:税額を正しく把握するため
現在の日本の消費税率は、8%と10%の複数税率だと説明しました。
消費税を正しく徴収するためには、どの商品に対して、どちらの税率が適用されているか、を明確にしなければなりません。
インボイスには、複雑な課税状況を正確に把握するために必要な情報が記載されています。
インボイスの発行により経理処理を正しく行い、消費税額を正確に把握することがひとつ目の導入目的です。
目的2:益税問題を解消するため
益税とは、受け取った消費税額の一部を、自分たちの利益にすることを指します。
こういった「益税問題の解消」も、制度導入の目的のひとつです。
免税事業者が得をする例
たとえば課税事業者のAさんと、免税事業者のBさんがいるとします。
ふたりとも、1,000円(税込1,100円)の売上が立ちました。
この取引で発生した100円の消費税を、Aさん・Bさんはどのように処理するでしょうか。
- 課税事業者Aさん:100円を納税する義務アリ
- 免税事業者Bさん:100円を納税しなくてOK
納税を終えたAさんの手元には1,000円、納税しなかったBさんの手元には1,100円残ります。
つまり、同じ金額を売り上げたにもかかわらずBさんの方が得をする、というわけです。
みなし仕入れ率で課税事業者は納税額を減らす
「免税事業者だけが得をするの?」と思われるかもしれませんが、実は課税事業者にも益税問題は関係しています。
消費税の納税額の計算式は以下の通りです。
消費税納税額
受け取った消費税額ー支払った消費税額=納税額
ペンの仕入れ値と売値にかかる消費税を例に取ってみます。
- 税込770円でペンを仕入れた
支払った消費税:70円 - 税込1,100円で販売した
受け取った消費税:100円
→→納税額:100円ー70円=30円
770円(税込)で仕入れたペンを1,100円(税込)で販売した場合、納税額は30円です。
しかし一定の条件を満たす小規模事業者の場合、より簡易的な計算方法で納税額を算出して良いことになっています。
条件を満たす小規模事業者の消費税納税額
受け取った消費税額ー(受け取った消費税額×みなし仕入率※)=納税額
※みなし仕入れ率は、業種ごとに定められています。詳しくは国税庁のタックスアンサー「No.6509 簡易課税制度の事業区分」をご確認ください。
このような大雑把な計算方法を選択することで、事業者は納税額を少なくできる可能性があります。
インボイス制度は消費税の正しい納税のためにある
消費税の複数税率に対応するため、そして消費税を正しく漏れなく納めてもらうために導入されるインボイス制度。
では現在消費税の納税義務がない免税事業者には、どのような影響があるのでしょうか。
第2回目は、インボイス制度の導入がフリーランスに与える影響を解説します。
安定した案件受注のために、しっかり理解しておきましょう!