仕事上の成果を数値化し、それをもとに評価する結果主義。
頑張った過程ではなく、あくまでも「絶対的な数値」のみで評価されるため、やや乱暴で冷たい考え方だという印象を持つ人もいるかもしれません。
筆者がディレクションに携わっていた企業でも、結果主義を取り入れていました。
所属しているディレクターたちをよく見てみると「チーム内で1番の成果を残したのに評価が低い人」と、「チーム内で目立った結果を出していないのに評価が高い人」がいることに気付いたのです。
結果主義の考え方と矛盾しているようにも見えるこれらの評価。両者の特徴を洗い出してみたところ、「数値化された成果以外」にも評価を左右する要素があることがわかりました。
今回は結果主義で高い評価を得られる人の共通点を解説していきます。
結果主義は結果至上主義ではない
結果主義において最優先されるのは、当然ながら「その人が出した結果」そのものです。
ただし結果「だけ」が重要なのではありません。その結果を出すに至るまでの過程も重要な要素のひとつなのです。
このように説明すると混乱してしまうかもしれませんね。
ここで「過程」という言葉が持つ意味は、おそらく一般的にイメージされるものと少しばかり異なるでしょう。
「おにぎりを握る」というタスクに、あなたはどう向き合いますか?
「え? 何故おにぎり?」とお感じの方もいるでしょうが、誰もがイメージしやすい「おにぎりを握る」という作業を例に、結果主義と過程の関係性を考えてみます。
タスク:10時間以内におにぎりを100個握る
Aさんは制限時間の10時間をフルに使って、おにぎり100個を完成させました。
一方Bさんは、半分の5時間を使って「おにぎり製造マシーン」を開発、残りの時間はマシーンにおにぎりを握らせて、自分は好きなバンドのライブDVDを観ていました。
これだけを聞くと、10時間働き続けたAさんは真面目で、半分の時間を趣味に費やしたBさんは怠け者のように感じてしまいますが、結果主義においては2人とも同じ評価をされます。
つまり「どのようにおにぎりを握ったか」という過程ではなく、「おにぎりを100個握った」という結果のみで評価されるというわけですね。
これが結果主義の基本的な考え方です。
2人が握ったおにぎりは、本当に同じおにぎりか
このように結果主義を説明すると、きっと多くの人が「結果主義において過程が重要だとは思えない」と言うでしょう。確かにその通りです。
ただ、今回重視したい「過程」というのは「どのようにおにぎりを握ったのか」ということではありません。「おにぎりの質についてどのように考え、どのように行動したか」です。
引き続き先ほどの例を用いて説明すると、「おにぎりを100個握る」という点においてはAさんもBさんも同じ評価を受けます。
では、もしこの2人に優劣をつけることになった場合、あなたなら一体どのように差をつけるでしょうか。
例えばAさんが握ったおにぎりは、ふっくらと炊けた米で作られています。ちょうど良い固さで握ってあるので食べやすく、塩加減も絶妙でした。
一方でBさんのマシーンが握ったおにぎりには、水分が多くてべちゃべちゃの米が使われています。柔らかすぎて食べにくいうえ、塩分も強すぎました。
「おにぎりを握る」という点においては確かにAさんもBさんも同じ評価を受けます。
しかし「握ったおにぎりの味」という要素がプラスされた場合は、Aさんの方が圧倒的に高評価を得るでしょう。
なぜ「結果主義」なのに2人の評価に差がつくのか
AさんとBさんの評価差には、「過程を重視したか否か」という点のほかにもうひとつ、重要なポイントが隠れています。
これを読み解くために「おにぎりを100個握る」というタスクをAさん・Bさんがそれぞれどのように解釈していたか考えてみましょう。
おそらくBさんは「効率良くおにぎりを100個握る」ことしか考えていませんでした。
その一方でAさんは「おにぎりを時間内に100個握る」ことに加え、「米の柔らかさ」「塩加減」「握るときの力の強さ」など、よりおいしいおにぎりを作るためにどうすべきかを考えていたはずです。
では、一体なぜ同じ指示を受けた2人の間にここまでの差がついたと思いますか?
それはAさんには想像力があって、Bさんには想像力が足りなかったから。
タスクを表面的にしか理解していないBさんは、指示された通り、ただおにぎりを100個握ることだけに集中しました。
その結果、短い時間でタスクを完了させることには成功しましたが、完成したものを細かくチェックしていくと、それは「おにぎり」ではなく「おにぎりに似せた白米の塊」としか呼べないものだったといえます。
しかしAさんはタスク開始前に「このタスクでは何を求められているか」ということを真っ先に考えました。
「おにぎりを握る」というタスクがある
↓
おにぎりを作るということは、それを食べる人がいるのかもしれない
↓
ということは、ただ握るだけでなく味も重視する必要がありそうだ
↓
美味しいおにぎりを握るにはどうすべきか
このように、「タスクを終えたその先に何があるか」という部分まできちんと想像して取り組んでいました。
つまり想像力の有無が「過程を重視できたか否か」に繋がり、AさんとBさんの最終的な評価にも影響を及ぼしたのです。
さて。ここで改めて、冒頭の問い「結果主義においてなぜ過程が重要なのか」に戻ります。
過程を大切にした人だけが得られるもの
繰り返しますが、結果主義では結果を出せば評価されます。どんな手段を選んでも最終的な結果が同じであれば、もちろん評価も同じです。
しかし結果だけを重視してタスクの内容を深く検討せず、過程をないがしろにした人は、残念ながら評価が下がります。
筆者は結果主義を「ただ結果を出せば良いのではなく、タスクのその先を想像することで相手が求めるクオリティを正しく理解し、それに見合った結果を出すこと」だと考えています。
過程を重視、つまり品質を意識した行動は、タスクの依頼者へ「この人に任せておけば大丈夫だ」という安心感を与えます。
この安心感の積み重ねが、最終的に相手との信頼関係構築にも繋がるのです。
エンドユーザー・ターゲット・お客さま、表現は様々ですが、こうした方々を大切にできるかどうか、ですね。
結果以外の要素も大切にできる人だけが結果主義を制す!
結果主義と聞くと、つい「最小限の労力で最大限の結果を出すこと」だけに注力しがちです。
もちろんこの考え方が間違っているわけではありませんし、例に挙げたBさんのように業務を効率的に進めて、残りの時間は自分の好きなことに使うのも良いかもしれません。
ただしこのようなタイプの人に、それ以上の結果は見込めません。さらに言えば、効率的に進めたことが実績として認められるのは、そこにクオリティが伴っている場合だけです。
もしBさんが自分の好きなことに使っていた5時間を、「さらに効率を上げるためにはどうすれば良いか」「クオリティを上げるにはどうすれば良いか」考える時間にあてていたらどうでしょうか?
もしかしたら次は3時間で、さらにクオリティの高い成果物を出せるようになるかもしれませんね。
限られた時間でより多くの成果を上げるためには、業務の効率化を意識することは大切です。
しかしそれだけにとどまらず、常に過程=クオリティを高めるための行動を意識し続けることが、数年後のあなたの評価にきっと大きな影響を及ぼすことでしょう。