ICT環境の充実によりPC1台で多くの仕事が完結できるようになりました。会社に保管されているあらゆる書類がデジタル化され、自宅からでも簡単に閲覧できます。
自宅のPCを使って、会社にいるのと同じように仕事ができる。クライアントのもとへ足を運ばずに業務の説明が受けられる。契約は全てデジタル化。
リモートワーカーにとっては非常にありがたいことですね。同時に、ちょっとした怖さを感じる方もいるのではないでしょうか。
重要なデータを削除してしまったらどうしよう。知らない人にデータを盗まれたらどうしよう。
データにたやすくアクセスできるからこそ簡単に削除できてしまい、簡単に奪われるリスクがあります。
さて、リモートワークのデータ管理におけるリスクにはどういったものがあるのでしょうか。リスクが実際のトラブルにつながる事例についても考えてみます。
具体的な対策は以下の記事からどうぞ。
リモートワークの「データ」にまつわる3つのリスク
たった1つのデータによって事業の利益が大きく左右される現代。デジタル一辺倒かと思いきや、書類データが重宝される場面もまだまだあります。
まずはデータにまつわる「リスク」を挙げてみましょう。
- データ消失のリスク
- データ漏洩のリスク
- データ紛失のリスク
データの消失は、保存していた場所から綺麗さっぱりデータが消えることを意味します。
データ未保存の状態でアプリケーションが強制終了する、という不運に見舞われた経験を多くの方がお持ちではないでしょうか。これもデータ消失の1つです。
データ漏洩は、社内機密データや社内で管理している個人情報が外部に漏れてしまうこと。身近な事例としては、EメールのBCCとCCの間違いによるメールアドレスの漏洩が挙げられます。
大企業によるデータ漏洩も度々起きており、セキュリティが強固であるはずの企業でさえ漏洩のリスクを抱えていることがわかります。
データを「失くす」のがデータ紛失です。データを消失すると元に戻せませんが、データ紛失なら元に戻せる可能性があります。
しかし紛失データが他者の手に渡ればデータ漏洩になりますし、戻ってこなければデータ消失です。どちらか分からないから対処しようがない、という恐ろしさを秘めています。
個人・企業にかかわらずデータの取り扱いにはリスクが潜んでいる!
リスクが顕在化・現実化する瞬間
消失・漏洩・紛失のリスクは、データを扱う人全てが平等に抱えています。しかしリスクが顕在化してトラブルに発展するかどうかはケース・バイ・ケースです。
こうしたリスクを「リスク」にとどめておくために、まずは身近で起こり得るデータ関連トラブルを知っておきましょう。
またトラブルを招く行動や「ついうっかり」が生じやすいポイントを把握しておくことも重要です。
データ消失のリスクはあちこちに潜んでいる
データ管理リスクの中で顕在化しやすいのがデータ消失です。データ復旧サービスを利用すればある程度のデータを取り戻すことができますが、時間もお金もかかります。
データ消失が起こりやすい操作や状況を把握しておきましょう。
機器の破損
ノートPCにお茶をこぼしてPCが壊れてしまった。外付けHDDを落下させてデータが読み込めない。
まずはこうした「うっかり」による機器の破損が身近な事例ですね。データが救済できることもあれば、元に戻らないこともあります。
地震や水害・落雷などにより機器が破損することもあります。保険が適用されて端末の購入は可能でも、データは元に戻せません。
外付けHDDを使用しているケースでは物理的な衝撃や浸水だけでなく、寿命による破損も十分あり得ます。
では、単体の HDD が装着された外付け HDD の寿命はどれくらいという目安を持っておけば良いのでしょうか。あくまでも目安ですが、メーカーの設計によると単体の HDD は 1 万時間使えるように想定されています。
1万時間というと年数が分かりづらいですが、1 日あたり 8 時間使ったとすると、3 年半という計算になります。
Dropbox Business https://navi.dropbox.jp/
特に定期バックアップや家庭内の録画データ保存などで稼働時間が長いケースでは、想定されるよりも短い期間で突然破損するかもしれません。
保存操作ミス
保存のし忘れや保存方法の間違いといったうっかりミスが、データ消失の原因になります。
3時間かけて作ったパワーポイントの資料を保存せずに閉じてしまった。多かれ少なかれこの手の失敗は誰もが経験しているのではないでしょうか。
「保存せずに閉じますか?」という問いかけもなく突然データが失われる「アプリケーションの強制終了」という悪夢もあります。
また顔面蒼白度が非常に高いケースとして「上書き保存」が挙げられます。誰かから共有された元データに、誤って自分のデータを書き込んで保存してしまうケースです。
最近は自動バックアップにより救済できることが増えましたが、一昔前は復旧の見込みが低いデータ消失パターンでした。
ウィルス感染
自分は大丈夫だと思っていると痛い目に遭うのがウイルス感染です。ちょっとしたイタズラレベルのウイルスもあれば、データ消失につながるウイルスもあります。
ウイルス対策ソフトはPCの動きを重くすることがあるため、ソフトの稼働を停止している方もいるのではないでしょうか。
フリーランスの案件によっては「ウイルス対策ソフトインストール」を義務付けている場合も。
クラウドストレージの操作ミス
クラウドストレージは大きく2つの保存方法があります。
- 同期(ミラーリング)
- バックアップ
PC内の指定フォルダとクラウド側のフォルダを全く同じ状態にするのが同期です。クラウドに保存できているから、と思ってPCのデータを消すとクラウド側も消えてしまいます。
このミスにより、高画質写真データを大量に削除してしまった写真家さんがいらっしゃいました。
快適さに潜むデータ漏洩のリスク
リモートワークの利点は時間と場所を選ばないこと。自宅以外で作業する方にとって公衆Wi-Fiはありがたい存在ではないでしょうか。
家族に気兼ねせず仕事ができるコワーキングスペースは、人がたくさんいてもなぜか集中できるお仕事スポットです。
実はこうした快適さや便利さの裏側に、データ漏洩のリスクが潜んでいます。
共有の無線通信の使用
カフェや新幹線など、自宅以外で無線LANが使用できるのは非常に助かります。しかしパスワードなしで誰でも接続できる無線通信はセキュリティが低く、データ漏洩のリスクがつきまといます。
またApple系のAirDropに代表される無線通信によるデータ送信も同様です。送り先候補に全く知らない方のアイコンが表示された経験はありませんか?
ワンクリック・ワンタップがデータ漏洩につながるのです。
第三者がいる場所での業務
カフェやファミレスで近くに座っている方のPC画面が丸見え、という状況に出くわすことがあります。集中している場合、他者に覗かれていてもその視線には気付かないでしょう。
PCの液晶が高画質になればなるほど、多少離れていても表示内容が鮮明に読み取れます。スマホに搭載されている高性能カメラで隠し撮りされてしまったら……。恐ろしいですね。
データを「物」に移して起きるデータ紛失
データ紛失にはいくつかパターンがあります。
- データを入れた媒体を紛失
- データを出力した紙を紛失
データを入れた媒体には当然PCも含まれますが、データ紛失が起きやすいのは小型化したフラッシュストレージでしょう。
会社から持ち出したデータを扱うとき
「データの持ち出しは社用USBフラッシュを使うこと」という社内規定を設けている会社があるそうです。USBやSDカードは耐衝撃性や携帯性に優れていますが、「超」小型化により紛失のリスクが高い媒体でもあります。
ポケットに入れたはずのUSBメモリが見つからない。MicroSDカードがアダプターから外れて消えている。背筋が凍る事態です。
また「紙」データの持ち出しにもリスクがあります。紙束ならまだしも、書類1枚を自宅に持ち帰った場合はあっという間に他の書類に紛れてしまうでしょう。
見つからないだけで家にあるのか、それとも捨ててしまったのか判断できないのが「紛失」の特徴です。
断捨離で勢いよく物を捨てる
断捨離では「クリアファイルごと捨てる」「箱ごと捨てる」といったダイナミックな行動を起こしがちです。ちょっとした箱に入れておいたUSBメモリやSDカードを箱ごと捨ててしまうかもしれません。
リモートワークで仕事専用スペースが確保できない場合、プライベートのモノと一緒に仕事のモノを捨ててしまうリスクがあります。
筆者はクリアファイルに挟んだ書類をファイルごと捨てた結果、開業届の写しを失いました。書類は再発行できますが、捨ててしまった書類は焼却されたのかそれとも悪用されたのか分からずじまいです。
一個人であっても「個人情報漏洩」案件です。
リスクを知って危険予知につなげよう
データを失う・奪われる瞬間は私たちの身の回りに沢山あります。しかし実際にデータを失った経験をしている方は、二度と同じ過ちを繰り返さないでしょう。
つまり、失う「瞬間」を知っておけばリスクが回避しやすくなるのです。
とはいえ心掛けだけでデータが守れるかといったら、それは無理でしょう。取り除けるリスクは取り除いておくことが重要です。
具体的なリスク回避方法は次の記事にてご紹介します。
安心してリモートワークに集中できるようにしたいですね!