テレワークの時間管理というと、企業の勤怠管理ツールや労働時間の管理・監視について語られることがほとんどです。
しかし社員が知りたいのはシステム云々ではなく、社員個人が充実した日々を送るための時間管理術!ではないでしょうか。
テレワークの時間管理が出社時より難しいとされる理由や現状把握の方法、すぐに試せる時間管理術を現役テレワーカーがご紹介します。
テレワークの時間管理はなぜ難しいのか
時間管理(タイムマネジメント)とは、限られた時間を効率的に使うために計画を立て、実行することです。大量のタスクを詰め込む作業ではありません。また決められた時間内は休みなく働き続けるということでもありません。
「効率」を重視し、少ない時間(少ないタスク)で大きな成果を出すのがベストです。会社でもテレワークでも考え方は同じですね。
しかし在宅勤務に移行したら時間管理が難しくなった、時間内に仕事が終わらなくなったという声が聞こえてくるのはなぜなのでしょうか。
いつまででも仕事ができてしまう
テレワークに集中できず、動画を見たりスマホをいじったりして仕事が終わらない。「申告なしで残業すればいいか」で片付いてしまうのがテレワークです。
しかしこれ、残業ではないことにお気付きでしょうか。動画やスマホいじりにかかった時間を定時以降に補っているんです。これを脳は「定時過ぎて仕事している=残業」だと理解します。
趣味の時間や家族との時間にも影響が出るでしょう。定時以降仕事をしても残業扱いにならないので収入は増えません。この状況が長く続くとメンタルヘルスを脅かします。
チャットに振り回される
テレワークに移行した多くの企業がコミュニケーションツールとして「チャット」を導入しています。そしてこれこそが時間管理を難しくする要因の1つです。
チャットは任意のタイミングで送受信できるため、忙しい上司に対しても遠慮なくチャットを送ることができます。顔色をうかがわない分ストレスフリーに感じますが、受信側は「即レス」という言葉に支配されがちです。
チャットの確認・返信は思いの外時間がかかるもので、マネージャークラスになるとチャット返信のために1時間確保している人がいます。
質問の回答や確認にかかる時間が読めない
チャットツールに「離席中」と表示されている場合、質問チャットに対する返信が5分後に来るか1時間後か分かりません。フルフレックス制のテレワークなら真夜中に返信が来るかもしれません。
疑問が解決しなければ仕事が進められず、時間内にタスクが完了できなくなります。自分の裁量で仕事を進めるのが難しい社歴の浅い人に多く見られる問題・課題です。
生活リズムが変わる
満員電車で往復2時間通勤していた人は、電車でバランスを保ちながら立ちっぱなしという2時間の「運動」をしなくなったといえます。その結果お昼にお腹が空かず、休憩を取らない人も……。でも脳は確実に疲れていきます。
また浮いた時間を二度寝に使ったり、終わらなかった仕事を夜遅くにやったり、出社していたときの生活リズムが保てない人がいます。
その結果集中できる時間帯にズレが生じたり、予期せぬ時間帯に眠気が訪れたりして、仕事が思い通りに進められなくなるのです。
生活リズムが変わるだけで人はストレスを感じ、心身のバランスを崩しやすくなります。
現状把握と効率化案
テレワークに移行して時間管理がうまくいかなくなった人や、そもそも管理手法が分からない人は現状を把握するところから開始し、現状が俯瞰できたら効率化できるポイントを探します。
まずは1日に実施したタスクと所要時間を、実施した順番でリスト化してみてください。また「重要なのに手が回らなかったタスク」も記載します。
所要時間については一度実測してみることをオススメします。筆者はGoogleChromeの拡張機能「GoogleChrome用の無料タイムレコーダー」を使って記録を取ったことがあります。
タスク名を書いてスタートを押し、タスクが終わったらストップ、次のタスクを開始させるという単純なタイマーですが、タスク単体だけでなくプロジェクト単位でも合計を出してくれます。
時間管理を妨げる要因をチェック
リストを見ながら、タスクが計画通りに終わらなかった原因を洗い出します。
- 優先度が低い割に時間を使いすぎているタスク
- オフィスでの所要時間よりも長くかかってるタスク
- 突発で追加されたタスク 等
優先度が適切か考える
タスクの優先度は「重要度・緊急度」の2軸で考え、「重要度>緊急度」として順位付けするのが一般的です。
- ◯重要+△緊急>△重要+◯緊急
明日のチームミーティングの資料作成と1週間後の社外プレゼン資料の作成。直近で必要なのは前者ですが、万が一にも遅延が許されず社外向けで完成度も求められる後者が「重要案件」です。つまり優先すべきは後者という考え方をします。
仕事の内容や進捗で変わることもありますが、まずはこれに則ってタスクの優先度が適切か確認してみましょう。
優先度の判断は結構難しい!初めは上司にアドバイスをもらうのが確実です。
タスクの効率化を考える
毎日実施する作業や単純作業は自動化を検討しましょう。例えば筆者の場合、日報作成・チャットへの送信はスプレッドシートとGAS(GoogleAppsScript)で自動化させていました。またノーコードツールを使えばコーディング不要で自動化が可能です。
自動化できない単純作業に時間がかかっているなら、午前中に回してみてください。集中力が高い時間帯なので効率よく仕事が進む可能性があります。
クリエイティブな作業に没頭しがちな人は、その作業を業務の後半に配置しましょう。午前は集中、午後は自由な発想に向いているといわれます。
なお自分で設定した所要時間を守ることも大切です!
終わらなかった重要タスクの行き場を考える
優先度を考えて不要なタスクを削る or 後回しにし、単純タスクは自動化。浮いた時間で「終わらなかった重要タスク」に着手でき、完了できるか考えてみてください。
完了できない場合はそもそもタスクが多すぎる可能性も否定できません。
とはいえ、一連の作業はあくまで現状把握と効率化案の検討です。これを実際のタスクに反映し、うまくいけば継続させ、うまくいかなければもう一度原因の洗い出しをしましょう。
すぐに試せるテレワークの時間管理方法
時間管理=タスク管理ではありません。24時間の中で仕事とプライベートを明確に仕切ることや、仕事を効率的に進めるために休憩することも時間管理に含まれる重要な項目です。
すぐに試せる時間管理方法をいくつかご紹介します。
タスクリスト作成
紙やPCのメモ、タスク管理アプリなど何でも構いませんので1日のタスク予定を書き出します。
- 1.所要時間の見積もりも書く
- 2.チャットのやり取りにかかる時間も書く
- 3.休憩時間も考慮する(後述)
- 4.バッファを30分プラスする
この4点に注意しましょう。すべてのタスクが定時までに終わるでしょうか。
終わらないようなら「2.チャットの時間」を意識的に減らしましょう。本当に返信が必要なもの・急ぎのものだけ返信し、それ以外は後回しにします。バッファは削らないでください。
所要時間の見積りは案外難しく、最初は過不足のオンパレードです。しかし繰り返すうちに見積りと実時間の差がなくなっていくので心配いりません。
タスクリストが完成したら、リストを見ながらタスクをこなしていくだけです。時間通りに仕事が終わらない日が続いたら「現状把握と効率化案」に立ち戻って業務の効率化を考えてみてください。
定時と昼休みを決める/守る
テレワークでも始業・終業の時間が決まっていればそれを守りましょう。「最悪残業すれば間に合う……」という悪魔の囁きを受け入れると元に戻れなくなります。
また時間に余裕がなくなると「昼食」を抜きがちです。食べなくても仕事はできますが、ブドウ糖不足により脳の働きが落ち、仕事の効率が下がっていきます。給油や充電をイメージして必ずお昼ご飯を食べましょう。
ちょっとした休憩を挟む
2020年に行われた総務省のオンライン・シンポジウムの資料では、テレワークの作業休止について言及してます。
一連続作業時間が1時間を越えない
作業途中、1、2回の小休止
次の連続作業までに10〜15分の作業休止
総務省 「テレワークの労務管理」 https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/COVID-19/img/policy/pdf/telework_gunma_03.pdf
1時間おきの休憩と作業の合間の休憩。これを行うことで従業員自ら労働衛生を保つことができます。
思い出してみてください。出社していたときは昼休み以外でも席を離れることはあったはずです。
頭を切り替えるために廊下に出てみたりコーヒーを淹れたり、会議から戻るときに同僚と立ち話をしたり。筆者は思考が煮詰まると社内の売店に行き、ガリガリ君を買って食べていました。
こうした休憩はサボることが目的ではなく仕事をスムーズに進めるためのリフレッシュが目的だったはずです。テレワークでも必要ではないでしょうか。
集中の妨げになるものは視界に入れない
会社では30分で完了できるタスクが在宅では40分かかってしまう。この理由として考えられるのが集中力の低下です。
テレビや本・スマホが気になると、気にした分だけ時間をロスします。5分だけ……と手を伸ばしても怒る人はいません。5分のつもりでも、お楽しみモードから仕事モードに切り替える時間を考慮すると5分では収まりません。
まずは集中力を削ぐ要因を視界に入れないことが大切です。どうしても誘惑に負けてしまう人は、割り切ってタスクリストに項目を作り、所要時間を書き込みましょう。
即レスするチャットの基準を決めて対応
全てのチャットに即レスすると更に次のレスがつき、どんどん時間が削られていきます。即レスするチャットとそうでないチャットの基準を決めておきましょう。
まずはタスクの優先度に基づいて選別します。「急ぎです」「◯時までに」も指標になりますね。また上位者からのチャットは自分のレスで次のアクションが決まる可能性があるので、早めの返信がベストです。
その他、日頃のチャットを見返して優先度を考えてみてください。明らかに重要度が低いチャットルームの通知はOFFにしておきましょう。
またチャットを開くという作業を減らすため、サブモニターやスマホ・タブレットでチャットを開いておくといいでしょう。「開く」という動作なしで送信元の確認ぐらいはできます。
筆者はチャットの通知を音+バナー(通知パネル)に設定しています。チャットを受信するとPC右上にピョコンとメッセージの一部が表示されるので、チャットを開かず即レスすべきかどうか判断できます。
時間管理は自分で時間を操る術!
私たちは日々の生活の中で少なからず時間管理をしています。子どもが◯時に出発するから◯時までに〜をしなければ、と考えて起床や食事の時間を決める。これこそが時間管理で、誰にでもできるんです。
自分が持つ時間を自分で操るのが時間管理の基本。成長のために引き受けたいタスクがあれば、今のタスク状況を数字(時間)で書き出し、優先度が低いタスクと入れ替えられないか上司に相談してみましょう。
時間に操られず、常に時間を操る側でいることを意識すれば、時間管理は自然と身についていきます。