リモートワークに移行し、上司にとって「見えにくくなったもの」があるといわれます。代表的なものが働きぶりや働く姿勢です。
リモートワークの人事評価は難しい。だから成果主義に移行したほうがいい。
……本当にそうでしょうか?
これまでの評価制度は、働きぶりや姿勢といった数値化できない指標を加味していますが、何を見ていたのでしょうか。
成果主義のフリーランスをマネジメントしてきた私自身、成果主義が正しい評価方法だと断言できません。
リモート環境で人材育成・評価を行ってきた経験から、リモートワークで正当に評価されるために何をすればいいのか、考えます。
リモートワークで見えない?見ていない?見せていない?
「見えにくい」の急先鋒が、取り組みの姿勢ですね。
例えば立場が異なる人と助け合うチームワークや協調性。他人任せにせず自分で考える主体性。難しい仕事・未経験の仕事にも挑む積極性。
これらはチャットのやり取りからでも見える、というのが筆者の考えです。
取り組み以外に、仕事の過程が見えにくいとされています。
リモートワークでは過程が見えない、だから成果主義にせざるを得ない。こうしたマネジメント層のお話を時折耳にしますが、ちょっと乱暴な気がしてなりません。
評価なんてできっこない、と匙を投げる前に考えておきたいことが3つあります。
- 上司は見ようとしているのか
- 職場は見える仕組みを作っているのか
- 社員は見せようとしているのか
評価される側としては、3番目がポイントです。
リモートワークでも働きぶりは見える
今までのマネジメントにおいて「人選」を何度も経験しています。マネージャー人材やリーダー人材、あるいは突発重要業務の依頼先などですね。
どのように人選していたのか振り返ってみました。ここにヒントがありそうです。
人を見ずして人選できず
フリーランスが多くを占める組織だったため「成果を出している人」を選ぶのがクライアントの方針であり、絶対条件です。
しかし成果(納品数や正確性など)を数値化すると、複数人が「全く同じ点数」という状況も起こりえます。
その場合は働きぶりを見て選んでいました。つまりリモート環境であっても、働きぶりは見えるんです。
そもそも日頃から働きぶりを見ていたため、人選にそこまで苦労しなかった気がします。
チャットから見えるチームワーク
フリーランスでも、ディレクターチームに所属すれば当然チームワークが要求されます。
メンバーとしてチームワークができる人でなければリーダーになれません。
チームワークができるか否か、人選の際はチャットのやり取りを見て判断していました。
実はチームワークって、メンバーだけでは作れません。リーダー不在でチームワークが発揮できたなら、その中に必ずリーダーポジションの人がいるはずなのです。
チームワークとは、リーダーに適切な頻度で必要な情報を報告し、指示に従って100%の働きをすること。仲良しこよしではありません。
様々な意見を吸い上げてチームにとって最善の道を選択し、必要な場所に指示を出すのがリーダーです。
私はチャットのやり取りを見て、まず何よりトラブルを起こしていないか、そしてリーダーに報告を行っているか、相談内容がわかりやすいか、などをチェックします。
チャットから見える主体性
あらゆることを「自分ごと」として捉えられる人を選んでいました。
「このシステムが使いにくいのでどうにかしてください」ではなく「こんなふうにできませんか」。
「このやり方を知りません」ではなく「調べてみましたが分かりませんでした」。
変えよう・学ぼう・知ろう・やってみようという姿勢は、実はチャットでも見えるんですね。もちろん、見ようとしなければ見えません。
過程を無視すれば企業の成長は止まる
フリーランスは納品が全てで、過程は評価されない。うーん、確かに「過程を納品してくれ」とは言われませんね。
でも過程を粗末に扱うと企業は成長しません。
過程には価値あるヒントが転がっている
ディレクター時代、クライアントに「どういう手順でこの作業をやっていますか?」と質問されたことがあります。何かやらかしてしまったのかも……と冷や汗モノでした。
しかし話を聞くと、作業スピードが他より早くてミスが少ない、その理由を探って共有したいとのことでした。
もう1つ例を出しましょう。
マネージャーとしての数値目標に手が届かなかったとき、クライアントに「どういうペース配分でどういうスケジュールで進めましたか?」と質問されました。
全てほじくり返し、どの時点で何をすべきだったのか考え、次月度に活かすことができたのです。
このように「過程」には多くのヒントが転がっています。クライアントは「成果主義」といいつつも、過程を決して無視しませんでした。
ベンチャーとして驚異の成長率を見せている企業です。成長の要因のひとつが「過程を見る」点にあるのだと考えています。
過程は企業の財産になる
Cという成果に至るまでに、Aで失敗し、Bであと一歩届かなかった。
今後継続的にCで成果を出すには、AとBを避ける必要があります。でもAとBを経由して失敗した「過程」を知らない人は、同じ失敗をするでしょう。
先程のクライアントのように、上司が過程を知ろうとする動きを取らなければ、A・Bの失敗を知ることはできません。
では社員は、上司に質問されるまで待っていればいいかというと、そうではありません。過程を無視する上司には、渋々教えてあげてください。
過程の報告は上司のためではなく、企業のためなのですから。そしてこれもまたチームワークの1つなのです。
積極的に見せていますか
主体性の項目で、「このやり方を知りません」ではなく「調べてみましたが分かりませんでした」、だと書きました。
鋭い方は「おや?」と感じたのではないでしょうか。
「やり方を知らない」と言った人が何も調べていないとは限りません。調べたけれど分からなかったから「知りません」と言った可能性があります。
でも、調べたかどうかはこちらに伝わりません。調べたなら「調べました」を明確に伝えてほしいのです。
平たく表現すると「やったことは全て報告」でしょうか。
見せるが勝ち
本来なら、会社サイドが「見える仕組み」を作るべきです。見えない・できないと言い続けている限り、絶対に見えません。
しかし現実問題、そうした仕組みがないのなら積極的に見せにいきましょう。
もし定常業務としてタスク報告があるなら、今までよりも少し細かく書いてみてください。
毎日のタスク報告がない場合は、ちょっとしたトラブルの記録と対処方法、自己判断で進めた業務などについて「念のため〜」という形でチャットで報告するといいですね。
評価基準を確認しておく
「勤務態度が見えないから評価しにくいんだよね〜」と苦笑いしている上司に評価されたくありません。と思うのは筆者だけでしょうか。
会社、あるいは上司はどういった基準で社員を評価するのか、明確に、できれば文章として確認しておきたいですね。
リーダーポジションにいるなら報告しやすい空気を作る
1つの成果を出すために1週間かかる人と1日で終わる人がいたら、やはり後者が優秀です。
1日で終わる人がいるのに、どうしてこの人は7日かかっているんだろう。その疑問をぜひ大切にしてください。
どこで時間を取られているか・動きが止まっているか確認してください。その人は困っているのに、なかなか言い出せないのかもしれません。
リモートワークという新しい環境に移ったことで、日常だったはずの相談や質問がしにくいと感じる人がいるのです。
そんな様子が見て取れたら、先輩・リーダーが率先して相談しやすい空気を作ってあげましょう。
フリーランスの場合、一度も顔を合わせたことがない間柄で上下関係が生まれます。
そうすると尚のことお互い踏み込みにくく、オンラインミーティングという絶好の機会なのに言いたいことをグッと我慢することがありました。
相手はもっと我慢していたはずです。そんな状況で、上司・先輩に気軽な相談ができるはずありません。
踏み込みにくいと感じるのはお互い様。まずは上司・先輩から歩み寄ることが大切ですね。
後輩の成長は先輩の成果です。
リモートワークは実力が評価されるチャンス
災害や疫病など「何があってもおかしくない」世の中。今後リモートワークとはまた違う働き方を強いられることがあるかもしれません。
そうなったとき、「この環境では実力が出せない」なんて言い訳は通用しないでしょう。その環境で実力を発揮する人もいるわけですから。
人によって得手不得手があるので、リモートワークに移行して評価が大きく落ちる人もいるかもしれません。
残念ながら「あの人は出社していれば仕事ができる人だから」で加点されることはないでしょう。
(そんな上司がいたら、速やかに上層部に訴えてくださいね)
与えられた環境、限られた環境で成果を出し続ける人が評価される。
当たり前のことが当たり前に行われるよう、願っています。